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未発売映画劇場「新・怪人マブゼ博士/犯罪王国」

前作の「新・怪人マブゼ博士」はこちら参照

ということで、しぶしぶ(笑)見た、アメリカ版ドクトル・マブゼ第2弾。タイトルは「Doctor Mabuse:Etiopomar」 いうまでもないが、日本ではまったくの未紹介。

マブゼ博士によってひそかに支配されている町の名が、タイトルにもある「Etiopomar」だそうだ。その支配を支える基本計画を記した秘密文書が盗まれる。マブゼは配下のロボットを使って文書を追うが、文書はマブゼに反乱を起こそうとする市民たちの手に落ちていた……

みたいな話が、前作同様に、ひどく盛り上がらない調子で描かれる。

前作に比べるとストーリーの核はまだしっかりしているふうなのだが、いかんせんその描き方がもどかしい

相変わらず、バストショットの人物のセリフの応酬で話を進めようとするから、画面に動きが少なく、展開が感じられない。ヘタクソな舞台劇を間近で見せられている感じだ。

撮影はデジタルで行なわれているようで、エフェクトを多用した画面は、個人的な感想になるかもしれないが、見づらいことこのうえない(ただし、今回は何か所かモノクロ処理したシーンがあったが、ここは見栄えしていた。あの白と黒のクッキリした対比はデジタルならでは)

戸外の場面も前作よりは多いのだが、背景の風景を合成しただけ、おまけに合成が粗くてそのことがあからさまに過ぎるのは、やはりいただけない。またそうした画調に合わせるためか、ほんとうに屋外で撮影したと思われるシーンも、粗くぼんやりした画にしてあるため、ますますイライラが募る

マブゼ博士のロボット軍団(といってもほとんどは一体だけ。最終的にも計5体ぽっきり)にしても、50年代アメリカSF映画や、メキシコ・ファンタスティック映画のようなメカっぽいものではなく、ただ単に表情を消して視線を固定した女性に過ぎない。ちょっとボンテージな服を着て、髪の毛の色がシルバーやレッドなのが特徴だが、そういわれなければロボットには見えんぞ

余談だが、最近のこうしたヤスモノ映画では、ロボットやエイリアンや超能力者といったSFガジェット風の女の子が出てくると、高確率で髪の毛の色がド派手なカラーリングになっている。私はこれが日本のANIMEの影響だと思うのだが、どうなんだろうか。

ということで、最終的には不満ばかりが残る出来ばえになってしまった。本作をもって、アメリカン・マブゼのシリーズが終了したのも無理はないだろう(アメリカ国内では映画祭のみの上映。単独でのソフト発売もなかったようで今回見たDVDに前作と同時収録されたのみらしい)

なんともシロウトくさいマブゼものだったが、このシリーズでマブゼ博士を演じたジェリー・レイシーは、ちゃんとしたベテラン俳優。テレビの出演が多いようだが、フィルモグラフィにはかつての人気番組「警部マクロード」や「ミセス・コロンボ」、2011年の「シャーク・アタック!!」などもある(日本ではほとんど知られていないが)

もっとも本作では前作にも出たローマン警部に憑依している(マブゼ博士の常套手段)ので、前作でも警部を演じたネイサン・ウィルソンがヒゲをたくわえてマブゼ博士に扮しているシーンが多い。

ちなみにこのシリーズをなんとかかんとか作り上げた製作・監督・脚本のアンセル・ファラージは、まだ27歳の若ぞ……いや若者(1991年生まれ)

この若さで、すでにIMDBに30作以上の監督作品が上がっているので、それはそれで大したもんだと思う。

ただしIMDBのリストアップは長編の商業作品に限らない。自主映画レベルのものや短編作品も多く含まれるので鵜呑みにはできない。実際ファラージのフィルモグラフィには、かなり出自の怪しいものも多いようだ(当然、日本ではまったくの未紹介)このレベルでいいなら、私も学生時代に撮った8ミリ映画を登録しておこうかな(笑)

顔写真が、ジェリー・レイシー扮するマブゼ博士のご尊顔である

ということで、いろいろあったが、現時点での怪人マブゼ博士シリーズは、これにて大団円ということになる。おつかれさんでした。

だが、もちろんマブゼ博士は不滅の存在。いつかまた、世界のどこかで復活して暗躍することだろう。その日が来るのを鶴首して待て!

【マブゼめぐりの全貌については、前回をご参照ください】

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