ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(2)

現在でもそうだけど、今回の映画が作られた当時、香港で日本のコミックはたいへんな人気がありました。

かつて私が初めて香港へ行ったころ(1980年代終盤)は、まだまだ海賊版の全盛期。先週日本のコミック誌に載っていたばかりの作品が、もう広東語版で出ていたりして驚かされました。そしてそうしたものが、街角のニューススタンドみたいなところから、怪しげな露天商、マーケットの隅のジャンクショップなどで、ところかまわず売られていました。

それから香港が中国へ返還される1997年に向けて、どんどん状況は改善されて、正式に版権を取得した正規版が増え、悪貨は見事に駆逐されていきましたが。

そのころ香港で人気があったコミックは、日本とほぼ同じ。当時日本市場で独走状態だった集英社の「少年ジャンプ」の連載作品が一番人気。そうした作品が香港映画で実写映画化されたのが、今回の「シティーハンター」であります。1993年の作品。

さすがはジャッキー・チェン、香港映画ではよくあった「タイトルや主人公の性格、あるいは名前だけいただいたバチモン」ではなく、日本の権利者から正式に映画化権を取得した作品。その証拠に、映画の最初と最後に原作者・北条司のオリジナルイラストが組み込まれてます。

日本での公開での字幕や吹替では、ジャッキーはコミックと同じく「冴羽獠」と名乗ってましたが、オリジナルの広東語では「孟波」 音だけを聞いてると「マンポー」と聞こえますが、なぜそんなことになっているかは知りません。

香港での映画化なので、主人公は新宿ではなく香港の私立探偵。妹分の助手・香を演じるのは当時人気絶頂のジョイ・ウォン。この二人が日本の大富豪の依頼で、彼のワガママ娘を家出先から連れ戻すというのが大筋。とはいえ、結局は彼女が乗客で乗り込んだ豪華客船が、たまたま武装強盗団に襲撃され、なぜか乗り合わせていた腕利きの女性エージェントやギャンブラー、人気歌手らを巻き込んでドタバタを繰り広げるという作品。

ストーリーがテキトーな作品もないではないジャッキー映画ですが、ここまで大雑把な作品はさすがにめずらしいです。製作時期としては「新ポリス・ストーリー」や「酔拳2」のあたりなのだから、その違いは歴然ですね。

それもこれも、本作の監督に起用された「ヤスモノ映画大先生」バリー・ウォン(王晶)のせいなのは間違いないところ。

原作のコミックもそうだが、けっこうベタでしょうもないギャグは、「シティーハンター」の魅力のひとつ。これこそ、バリー・ウォン大人のもっとも得意とするものなのだから、まあ暴走するのも無理はない。

そこに、この前後はまじめな映画作りが続いていたジャッキーが悪ノリしたのもあるでしょう。

ジョイ・ウォン姉さんも、日本から参加の「国民的美少女(当時)」後藤久美子も、ギャグ満載の悪ノリアクションに、しっかり付き合わされています。体当たりアクションといえば聞こえはいいけど、コケたり、吹っ飛んだり、殴られたり、バカポーズ取らされたりの大騒ぎ。ご苦労様でした。

総じて、ジャッキーとバリー・ウォンの二人のおじさんが、好き勝手にふざけ散らしているだけのような映画。いまどき(いや当時でもですよ)、高いところから人間が落ちたら、ドーンと床に人の形の穴があくなんてギャグ、誰もやらんでしょ(笑)

まあ、そこが面白いと思えれば面白いので、そうしたものに耐性があると自信のある方は是非どうぞ。

しかし、どうしてこの映画が、「隔週刊ジャッキー・チェンDVDコレクション」からオミットされたかは、謎だ。あるいは原作者側との版権問題でもあるのかと思ったが、フツーに国内版DVDは売られているし……

74巻予定が66巻で、途中打ち切りになった影響だけなのか? 今となってはどうでもいいことだけどね。

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