500円映画劇場「スネークトレイン」
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「またまた出たよ誇大広告が」と、ジャケットに躍る「消滅直前! 超弩級に飲み込まれる!」のコピーに苦笑してたら、ゴメンナサイ、ほとんど嘘じゃなかったよ。
というわけで「スネークトレイン」です。2006年のアメリカ製オリジナルビデオ映画。
メキシコ国境からロスに向かう列車内に大量のヘビが出現して乗客パニックも列車は止められず阿鼻叫喚。ざっとそんなお話し。「小動物パニックもの」だと思ったんだが、そうじゃなかった。じつはオカルト系ホラーだったのだ。
というのも、出現するヘビが異常に怪しいから。荷物に紛れてとか、乗客の動物学者がもっていたサンプルが逃げ出してとか、そんなナマヤサシイしろものじゃないんだな、これが。
何かの呪いにかかった女性の体内から、ヘビがウニョウニョ湧いて出てくるのだ。これには意表をつかれる。人工着色料フル使用のネバネバみたいなゲロといっしょに、女性の口から生きた小ヘビが次々と吐き出される描写はちょっとグロくて引くけどね、さすがに。でも、この女優さんには主演女優賞か、努力賞をさしあげたい。
まあその小指ほどの小ヘビ群が、あっという間に子供を丸呑みにするくらいの大蛇に成長するのは、この手の映画ではお約束だから許そう。でもこの映画、いろいろと「?」が多過ぎるようだ。
まずは、このヘビ群出現の原因となる「呪い」。理由も理屈もほとんど説明されないんだけど、誰が何のために発した呪いなのか? なんで彼女がそんな目に遭ってるのか? どうしたら呪いを解消できるのか? さっぱり説明描写なしなんだけど、ひょっとしてメキシコじゃ、こういう呪いって、日常の常識なのかい?
おまけに彼女に同行している、夫?兄弟?恋人?マジナイ師?の男が、彼女の体内から出現したヘビを懸命にとっつかまえてはガラス瓶に集めていくんだが、なんで? そのヘビ、大事なの? このヘビが一匹でも欠けると、彼女の呪いが解けないとか? そうなのか?(すべて推測)
こうした、ストーリーの根幹に関わるような理屈を説明しないのは、500円映画にはけっこう共通した欠陥だ。
たぶん、シナリオを書いた本人は、ちゃんとその理屈がわかってるんだろう、自分の頭のなかだけで。でも色々と構想しているうちに、それを完成シナリオに盛りこむのをすっかり忘れたんだよな、たぶん。あるいは長過ぎた下書きを縮めるためにカットするときに、うっかり切り捨てちゃったとか。そうした説明を、書き忘れたりカットしたりしてしまうのが、500円映画になるかならないかの最初の関門なのかもしれない。
「?」過剰なのは、シナリオだけじゃない。
物語の都合上、舞台はほぼ全面的に疾走する列車内に限定される。これはなかなかうまい手だ。「舞台の範囲を限定し、登場人物を少なくする」のも映画を安く作るコツのひとつ。セット代が安上がりだもんね。
この作品では、カメラを(たぶん)鉄道公園なんかによくおいてある、廃車になった展示用の列車に持ちこんで撮影したんだろう。おかげで、そこらの倉庫や工場を深海基地だとか宇宙船内だとか言い張る映画よりは、ずっとましなリアリティがある。
ただし、列車の疾走感はまるでない。実際には走ってないんだろうから、当たり前といえば当たり前だが、そこをごまかすのが撮影や演出の腕だろう。
原因のひとつは、この列車、画面を見てるだけじゃ、どっちに向かってどう走ってるのか、さっぱりわからないせいだ。どっちが、前? どういう順番で連結されてるの? そのへん、カメラ位置などの工夫が、もうひとつ不足なんだよね。これは演出の責任だね。
と、まあいろいろ言ったが、ただそんな数々の「?」は、見終わったときにはきれいさっぱり忘れられる。そう、衝撃のラストで全部吹っ飛ぶのだ。
ここで「宣伝コピーがほとんど嘘じゃなかった」という部分に戻ってくる。
【以下若干ネタバレです】
はい、ラストで突然出現した巨大スネークが、比喩とかシャレではなく、ほんとに列車を丸呑みにするのだ。スゴイ、これは予想しなかった! まさに仰天の展開だ! ほんとに驚き……あきれた(笑)
なんと、この肝心のラストで、それまで生きたヘビとまあまあなハリボテ(しっかり写さないからボロは出にくい)で善戦してきたスネークショットを、なぜかCGに切り替えてるんですよ。まあ、あれを実写でやるのは難しいだろうけど。
その結果は、もう言うまでもないでしょ。
CGは両刃の剣。使い方を間違うと、超チャチになるってことです。
ということで、クライマックスで全部ぶち壊しになってしまいましたというオソマツでした。
いや考えようによっては、今までの不始末を全部吹っ飛ばしたんだから、むしろヨシなのか? ひょっとして、わざとやったのか? 最初からこれが狙いだったのか?
だとしたら、かえってスゴイが、まあそんなわけもないか。という具合で、最後まで「?」だらけの映画だったな。
【本文はこれで全部です。もしもお気に召しましたらご寄進下さい(笑)】
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