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#30. 抱負の前に、まず分解


「新年の抱負」は、英語では New Year's resolution と言うのが一般的だが、この resolution は動詞の resolve が名詞になったものである。

...... あれ?高校のとき resolve の意味を「分解する」で覚えたぼくは、ここにある差を長年不思議に思っていた。「新年の分解」がどうして「新年の抱負」になるんだろう。

「抱負」というのはある種気持ちが「固まった」状態なのだから、「分解」なんてむしろその逆のようにも思えるのだが......

不思議に思っていながら今まで一度も調べてこなかった、過去の自分に別れを告げて、先日ようやく調べてみた。

いつものように Online Etymology Dictionary の resolve (v.) の項を見てみると、やはりもともと、この単語が 14 世紀後半にフランス語から英語に入ってきたときは、 "melt, dissolve, reduce to liquid"(溶ける,解ける)というような意味で使われていたようである。

これが 1520 年代に "determine, decide upon"(決意する,決定する)という意味でも使われるように発展した。

ではこの 2 つの意味の間に、どのような意味のつながりがあるのか。

resolve をさらに掘り下げて、その形容詞形 resolute (adj.) の項を見てみると、次のような説明があった:

The notion is of "breaking (something) into parts" as the way to arrive at the truth of it and thus make the final determination.
このイメージは、「何かを分解する」ことが、その真実に到達するための術であり、ゆえに最終的な決定を下すための方法でもあるという考えから。

つまり、「なにかを部品に分解していく過程において、人はそのモノの真実・真相を知ることとなり、そうすることによって真理を得た人は、結果的に強い決意を固めることができる」というようなことだろう。

話を最初の「抱負」(resolution) に戻すと、抱負とはつまり決心だが、その決心に至るまでには、人はさまざまな事情を細かく考慮しなければならない。

年が変わったのをキッカケに、アレもコレもと、なんでもかんでもやりたいことができればいいが、なにか新しいことを始めようにも、まずは自分の仕事や勉強、すでにある趣味などをあぶり出しつつ、

今後その達成のために割ける時間や自分の性格・思考の癖、あるいは継続に値する成果が見込めるか、など、実にたくさんのことを自分と対話をする中で、見つけていかなければならない。

自分自身や自分を取り巻く状況を細かく分析していくこのプロセスは、なにか大きなものを一つ一つの部品に分解していく過程とどこか似ている。

小さく分けて考えるという行為自体は、一つ大きな決意を固めることの逆を行っているようでもあるが、実際はこの「分解」のプロセスなしに、現実的な「抱負」はあまり見込めないだろう。

New Year's resolution とはある意味、新しい年を迎えるにあたり、今現在の自分を細かく分解して、分析し直す作業なのかもしれない。


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