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#7. 短くしたいは人の性


フィンランド人の友人から LINE にて連絡があった。曰く:

I really like the word 同感. Do you use it? If I want to express the same feeling in Finnish, it's "minä olen samaa mieltä" and it's way too long!
わたし「同感」って言葉が好き。これよく使う?もしこれと同じ気持ちをフィンランド語で表そうと思ったら、「ミナ・オレン・サマー・ミエルタ」って言わなきゃいけないんだけど、これって長すぎるもんね!

外国語としてある言語を見ている人は、ときにその言語の母語話者に斬新な視点を与える。

これを読んでいる日本人の中に、これまで「『同感』という言葉が好き」という感覚が芽生えたことのある人は、果たしてどのくらいいるだろうか。

たしかに、同意する気持ちを表すのに「同感」とだけ言えばいいのは便利かもしれない。言うのに 1 秒もかからない。

もともとはおそらく、「きみの考えにわたしも同感だ」とか、そういう文の形であったはずなのだが、それがぎゅっと短縮され、主語も目的語も取っ払って、「同感」とただ名詞ひとつ言えば済むようになった。

やはり人はどうしても楽な方に流れるものなので、(とくに形式ばらないカジュアルな場面では)長たらしい単語や文を律義にすべて言ったりはせず、それをどうにかして短く言おうと試みる。

そしてこれは、日本語でも英語でも変わらない。

たとえば、「ありがとうございます」はさまざまな派生形を経て、最近は「あざ(っす)」などと言われることがあるが、英語でも似たようなことが起きている。

"Thank you""Thanks" になり、"Thanks""Thanx" になり、最近とくにイギリスでは "Ta" などという究極の短縮形が使われるようになっている。

"Can I use your phone?"「ちょっと電話使わせてもらっていい?」
"Of course you can."「ぜんぜんいいよ」"Ta."「あざ」

といった具合である。

また、最近日本の若い人たちの間では、「了解」と言うのに「りょ」とか「り」と書く人たちがいるけれども、これもやはり、英語の "OK" の短縮形として近ごろ "K" というスラングが使われているのと似ている。

"Cool, I'll talk to you tomorrow then?" "K."
「よし、それじゃまた明日ね?」「り」

こういった短縮の流れは、簡潔とスピードこそが命の(ネットやスマホでの)テキストメッセージが主流になったことにより、いま現在ますます加速している。

人間は横着な生き物だから、口の疲れない「言いやすい表現」が文字になり(例:あざっす)、また指の疲れない「打ちやすい表現」が話し言葉に侵入する(例:りょ)。

こうしてぼくらの使う言葉が日を追うごとに短くなっていくのは、効率性を求める人の性ではあるのだけれども、やはり「あざ」や「り」などの行き過ぎた短縮には、なんとも言えない品の無さを感じてしまうのも事実。

そういった気持ちをフィンランドの彼女に打ち明けると:

I feel you. I really don't like some expressions young people use. Or could it be it's because we are getting old? :'D
その気持ちわかる。わたしも若い人たちの使う言葉のいくつかは本当に好きじゃないし。でもそれってもしかして、わたしたちが年寄りになってきているからじゃない?

とのご指摘。...... 悲しいかな。まったくもって「同感」である。


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