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5月1日~10日の詩(Nos. 24~33)

作品No. 24(5月1日)

私を定義する薄い肌は
絶えず剥がれて入れ替わり
かつての私は汗となり
空気と混じり 散っていく

拡大すれば
綿飴のような分子や原子が
心許なく集まっているばかり

「私」も
「あなた」も
少し密度が濃いだけの
形無き雲

留まらず
淀まず
清く流れ行け


作品No. 25(5月2日)

転んで初めて気が付いた
手足に鎖
口に猿轡

鎖は矛盾
求めても得られない
大切なのに失う
大好きな君に蔑まれる
アンビバレンスに耐え切れず
僕が悪いと丸め込む

轡は偽善
傷付けたくない
わがままは駄目
相手の気持ちを考えて
いつも良い人でいなければ

自分を騙し
自縄自縛
抜け出すのはいつ


作品No. 26(5月4日)

早く大人になりたくて
子供の私は置き去りに

その子は暗がりで泣いているよ
迎えに行ってあげなくちゃ


作品No. 27(5月4日)

愛がなければ人は生きられない
親の献身
友の気遣い
知らない誰かの優しい一言
ひとひらの愛の記憶に生かされる

相手の幸せの他は何も欲しないのが愛ならば
人には難しいわざだけれど
きっと誰にもできるはず

愛する勇気を
愛される勇気を


作品No. 28(5月4日)

子供のヒーローが歌う
愛と正義
そんなの綺麗事のまやかしだって
やさぐれることもある

だけどやっぱり
愛と正義なんだよな

愛のつもりで支配と搾取
正義を騙ってやりたい放題
そんな大人が多過ぎるだけ

本物の愛と
本物の正義を
求めない理由を探しているだけ


作品No. 29(5月5日)

いくら平和を望んでも
戦うしかないときがある
わかり合えないことがある
攻撃してくる人がいる

相手が憎くなくたって
守りたいなら抗うしかない

志を曲げないという戦い
暴力に屈しないという戦い

殉教者のように


作品No. 30(5月6日)

自由になるには金が要る
綺麗事では済まされぬ

依存するのは楽なようでも
主に歯向かえば生きられぬ

自ら糧を得るにせよ
良き飼い主を探すにせよ
飛び立つ力を与えるのは
しわくちゃの紙の翼

鳥籠の扉は開いている
小鳥が恨めしげに仰ぐ青空


作品No. 31(5月8日)

君の言葉が僕を切り裂いた
僕は平気な顔をして
傷を隠すのが上手くなった

君のためだよ
罪が君を苛むから
君の悪を隠蔽するため

君はなんにも気付かずに
裂いて
裂いて
僕はもう立てなくて

ごめんね
見せるよ
僕の傷
痛みをどうか分け合って

君が罪を拒否するのなら
僕は去ろう
僕は僕を生きる


作品No. 32(5月10日)

ねばつく糸でがんじがらめ
八方塞がりに思えたら

糸の一本を見つめてごらん
それは幻
誰かが勝手に決めたルール

君の足に枷は無い
空に境界は無い
どこへだって行ける


作品No. 33(5月10日)

一塊の岩
晴天の霹靂
僕を押し潰した

やり過ごすだけの長い長い時
幾つかの嵐の後を
柔い風が洗い
しょっぱい雨が慈しみ
岩を空疎な軽石に

僕は既に不具
だけど這い出せる

時間は癒す
どんな重荷も風化させて

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