「不存在証明」より
蝲蛄(ざりがに)と鯣(するめ)と凧糸と私 日田路 私たちはむかし繋がっていた
無限銀河の片隅の とある小さな惑星の 地軸をすこし傾けて その弓なりの列島を 春夏秋冬巡るたび いのち生まれて死に給う 母呼ぶ声の言の葉の 蛍火のごと儚きを その喜びを哀しみを 手を打ち鳴らし諸人の 声を震わせ舞い踊る 詩を詠むことのはじめとす
象洗ふ男ありけり聖五月 八月の闇を書庫より持ち帰る 勉強が嫌いな僕と蝸牛 八月の入口のない玩具店 城一つくれてやろうか鰯雲 はらわたの無き白菜を真っ二つ 肉体は死を運ぶ舟冬の月 句集「不存在証明」 佐藤日田路 2020/2/1