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双眼鏡を手にしている人はカワセミを話題にしない

私はスズメが好きだ。好きすぎて愛している。
双眼鏡を手に散歩するときも、まずはスズメをじっくり観察することから始める。

そんなときに
「鳥はいますか?」
と聞かれ、相手が双眼鏡を持っていない場合、正直に答えるのは非常にまずい。
「はい、スズメがいます」
などと答えると相手は怪訝な顔をし、
「スズメ????(そんなの見て何が楽しいの?このひと初心者なの?)」
となるのだ。
そして得意満面で
「カワセミがいますよ」
と、ご親切に教えてくれる。

かといって、カワセミを真っ先に話題にするような一般の方に
「ええ、そこにアオジがいます」
などと言ったところで
「え、アオジ?????(なにそれ?)」
となり、それはそれで面倒なのである。

最近はメタ認知ができてきたので、軽く受け流しつつ、適度にポピュラーな鳥の名前を口にする。
「そうですね、カワセミいますよね。すぐそこにメジロもいますよ
メジロであれば一般の方でもそこそこ想像しやすく可愛らしい容貌なので、
「え、メジロ!あらまぁ」
と、メジロに気を取られてくれるので、その隙にさりげなくソーシャルディスタンスすれば良い。
他に応用できる身近な鳥として、ウグイス,シジュウカラ,キツツキ(コゲラ)あたりなら、無難にメジロの代役をこなしてくれるだろう。

だが、相手が双眼鏡を手にしていたなら話は別だ。
「シロハラの声が聞こえますね」
という会話から始められるのだ。

手にしているのが、一眼レフカメラであっても気は抜けない。
相手が鳥に詳しいとは限らないからだ。
双眼鏡を持っていない望遠レンズ付きのカメラマンは駆け出しのバーダーである可能性が高い。
かつての私がそうであったように。

決して誰かを批判するつもりはない。
こういった方々と冷静に世間話をするための、私なりのメタ認知なのである。
冒頭の「双眼鏡でスズメ観察???」や「アオジ?なにそれ」なことを言われて自分が不快にならないためのライフハック。

そう、双眼鏡は私にとって鳥を見るための大切なアイテムであるのと同時に、相手を見極め快い会話をするための重要なアイテムなのである。

最近の私はというと、もっぱらカメラは持ち歩かず、財布とメモ帳と鉛筆だけをポケットに入れ、買い物がてらに鳥見をするというズボラさ加減。
その装備に双眼鏡が加わると、買い物という名の行為は散歩という名称に変わる。

例の流行り病の影響もあるけれど、もともと家の周辺に野鳥が多いので、鳥見のために遠出をしなくなってしまったなぁと、昔を懐かしむのだった。