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m-flo♡Sik-K & eill & 向井太一『tell me tell me』

コラボレーションって手っ取り早い打ち上げ花火で瞬間風速を出すには最も有効な手段です。m-floの凄い所はその取り組みをスキーム化(仕組み化)して継続的に行っていること。一度脱退したLisaが戻ってきて、m-floが完全復活を遂げたのが2018年。2年の時へ経てさらに復活したm-flo lovesの企画第一段に着目します。

完全復活宣言を告げるような曲構成

曲のど頭で、いつしか聞いたことあるメロディーと歌詞。

DJ play the music, louder お願い

数ある曲からこのフレーズを選んだ理由は何か。この曲のタイトルはmiss you。元々m-flo lovesシリーズが生まれた背景にはLisaの脱退がありました。ボーカルxラップx最先端のトラックを武器にしていた彼らは、その掛け算の中の一つを失い、色々な人とのコラボを予期なくされます。しかし間違いなくこの経験は彼らの音楽性も感性も高めてきたと思ってます。そんなLisaが帰ってきて、彼らのようやく元通り活動をできる喜び、それに対してのmiss youのフレーズの器用なのではと考えます。

この曲はコラボしているアーティスで順番にフリースタイルかのごとく曲を回していきます。向井太一の独特な4分のフローからスタートして、eillの16分のフローへとパスされて曲は展開して行きます。この二人バラバラに聞こえますが、フックは全部3連符であったりときちんと数珠繋ぎをして展開しています。

Lisaが全然メインを取らない

全員がバラバラなことをやっていてお祭りのような構成になっているのですが、BメロでようやくLisa登場かと思うとeillがメインを取ります。2番のVerbalパートを終わった後のBメロもEillがとるのですが、その後BメロをなぞったCメロをようやくLisaが取ります。これがもうお待たせ感と、大御所の貫禄さえも感じる効果があります。難しいことは何もせずに平常運転のままサビへと持っていく。間は空いたけど今まで変わらないというメッセージさえも感じます。そしてこのパートの歌詞。

oh baby, my heartは 君のflava
なぜ2人すれ違うわけ?
もどかしいほどに どんなに待ちわびたって
君を独り占めにできないなんて…

めちゃくちゃ、miss youのアンサーじゃん…

ずっと不安定なビート

イントロのシンコペーションを使用したピアノ・シンセのトラックが基盤となり、基本的にずっとビートがならないままこの曲は構成されてます。B江メロでスネアが4分でなりますが、基本的にはドラムとしてのビート感はずっと少ないまま曲は展開されていきます。その上に各アーティストがリズミカルに歌うものだから、なんとも言えない綱渡り感の緊張が曲全体を通してあります。
ただしサビになると急に4つ打ちになり、歌も同じフレーズを繰り返すシンプルなものに。ここに全体の緊張を和らげるとともに、自然と体がビートに乗ってしまう仕掛けがあります。緊張と緩和が非常に上手いバランスで保たれていて、一番ノッて欲しい部分に必然的にノらせる、計算されたドラマティックな展開です。

セッションはキャッチボールではない

各々がトラックに対して好き放題やっていて、いわやるセッションやフリースタイルに近いこの曲。けど各々でキャッチボールをしている印象はあまりありません。けど曲として成り立っている。それは何故か。
よく『音楽はキャッチボールだ』と言いますが、間違ってはいないのですがそれがすべてとも思っていません。セッションホストや、セッションに参加しているときから常に思っているのことですが、『音楽は電車だ』と個人的には考えています。
これはどのようなことかと言うと、アーティストたちは同じ電車に乗ります。その中で音楽を聴くもよし、本を読むもよし、人間観察するもよし、携帯をいじるもよし。ただ大切なのは全員が同じスピードで同じ終点へと向かっているという事です。それが個性のぶつかり合いを最大限高めて、おもしろい音楽へと連れて行ってくれると思っています。
この曲を聴いて、当時のその感覚を思い出しました。いやー、本当に良い作品だ。

まとめ:聴くべきポイント

久々のm-flo lovesシリーズ。起用しているアーティストも今まさに旬でブレイク寸前、また本質的で個性のたっているメンバーです。DJ TAKUYAとか多分自分の数億倍音楽聞いているんだろうな…
まとめます。

・miss youのフレーズを起用した意味
・m-floの完全復活を遂げる曲構成
・一人一人の個性のぶつかり合い
・必然的に体を動かしたくなるサビ

今後のm-flo lovesの作品がどのように化学反応を起こして音楽史に刻んでいくのかが今から楽しみです。


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