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1991年から92年、二つのゲームが生まれました。
FFⅣ、ファイナルファンタジーⅣ
1991年7月19日に発売。
ロマサガ、ロマンシング サ・ガ
1992年1月28日に発売。

今回は、この二つのゲームの対比のお話から、
現代日本の様相の変化を探っていきます。

プレイしていない方のために、概略から簡単に。
FFⅣ、ロマサガ、いずれも
RPG、ロールプレイングゲームです。
ロール(役割)をプレイング(演じる)ゲーム。
剣と魔法と冒険と成長のゲームです。
スクウェア(現スクウェア・エニックス)
というメーカーが作りました。

ロールプレイング、役割を演じる、ですから
プレイヤーはキャラになりきり
世界を旅する、冒険をする
ことになります。

FFⅣは「Ⅳ」ですからシリーズの四作目、
それまでの三作で培ってきた
要素をミックスさせ、爆発的に売れました。
まさに「ドラクエ」と並ぶ
RPGの金字塔のひとつと言えましょう。

対してロマサガは、単独のゲームと
とらえられがちなのですが、
ゲームボーイのゲームである
『魔界塔士Sa・Ga』から数えると
こちらも「サガシリーズ」の四作目です。
つまり、当時「王道」ととらえられてきた
「FFシリーズ」の対極としての
運命を背負ってきたゲーム、とも言えます。

概略はここまで、詳しい部分に踏み込みます。

FFⅣとロマサガ、ともに四作目に至って、
この二つのシリーズはまさに
「対極」とも言える様相を示します
(それまでは重なり合う部分もあったのですが)。

あえて一言で言えば
FFⅣは「決められたストーリーを味わう」
ロマサガは「自由な世界を自由に味わう」

そういうゲーム、です。

FFⅣでは、主人公は一人。選べません。
彼が「決められた物語」を旅していくのを
プレイヤーは「追体験」していきます。
もちろん、その中でも自由度はありますが、
起きる事件や加わる仲間は、決まっている。
いわば「映画」のような感じでしょうか。

対してロマサガでは、主人公を
八人の中から一人選ぶ形になります。
物語も、自由度がかなり高い。
アイテム探しや敵を倒す依頼も、
受けるかどうかは自由。
主人公以外の七人を仲間にするかどうかも
プレイヤーが自由に決められます。
RPGの元祖、TRPGにも近い。
いわば「現実」により近い形です。

RPGにつきものの「成長」についても
かなりの違いがありまして。
FFⅣはいわゆる「レベルアップ」です。
レベルが上がれば、
パラメータ、能力値が自動的に上昇し、
使える魔法なども増えていく。
対してロマサガは「レベルがない」。
戦闘終了後に、全体的なパラメータが
徐々に増えていくことになります。
いわば「熟練度」が少しずつアップ。
こういうところも「現実」に似ています。

はい、ここまでをまとめましょう。

◆FFⅣ:映画、自由度低い、レベルアップ
◆ロマサガ:現実、自由度高い、熟練度

当然ながら、どちらが良い悪いではない。
好みもあると思います。
「FFⅣのほうがハッキリしていて好き」
「ロマサガのフリーな感じが好き」
それぞれあるでしょう。
私はどちらも好きです。
読者の皆様は、どちらが好きでしょうか?

さて、ここからこの二つのゲームの対比を
現実世界の経緯に沿ってお話ししていきます。

1991~92年と言えば、
いわゆる「バブル崩壊」が起きた年。
ただし、ある日突然切り替わった、という
そういう性質のものではなく、
90年代を通して緩やかに
時代が変わっていきます
(何しろ「ジュリアナ東京」が生まれたのは
バブル全盛の80年代ではなく、
1991年5月のことなのですから…)。

その幕開けの頃、この二つの対極的な
RPGが生まれた、という事実が、実に面白い
(『ガリレオ』の福山雅治さん風に)。

FFⅣは、すでにストーリーが決まっていて、
プレイヤーはそれを「なぞる」感じです。
ただ、そのストーリーが実に多彩で極上。
仲間との出会いも別れも、決まっています。
プレーヤーは、あたかも自分が映画の主人公に
なったかのような気分を味わうことができる。

対してロマサガは、ストーリーは自由、
プレイヤーが動きを「決めていく」感じです。
仲間も、陣形も、自由に組めます。
善の道に進もうが悪の道に染まろうが、自由。
邪神に自分の仲間の命をささげて
強い武器をゲットすることだってできるのです。

1980年代までは、日本経済も上向きで、
いわゆる「レールの上」を走っていく
「王道」の生き方が良しとされていました。
初期の『課長 島耕作』(1983年連載開始)
ではありませんが、年功序列、終身雇用の中、
いかに出世(レベルアップ)をしていくか。

これに対し、1990年代からは、
バブル崩壊により経済は下向き、
1997年山一證券自主廃業、拓銀破綻など
今までの「レール」が消えていく
というか、そもそもレールは幻想だったのでは、
少しずつ「熟練度」を上げていくしか
ないのではと「徐々に」気付かされていく時代。
「就職氷河期」も、このあたりからですね。

誤解を恐れずに言えば、
「FFⅣスタイル」から「ロマサガスタイル」に
変わっていったのが、この30年ではないか?


…あれから、30年近く。
そろそろまとめていきましょう。

私自身の「キャリア」を振り返ると、
ロマサガ的な自由にあこがれつつも、
FFⅣ的なストーリーを追い求めて、
新卒で入社、現実と理想のギャップに
三年で会社を辞め、熟練度を上げるべく
這いずり回って試行錯誤をして、今ここです。
FFⅣの主人公セシルというより、
ヘタレ吟遊詩人のギルバートのような感じです
(たとえがマニアックですみません)。

読者の皆様の「キャリア」を想像しますに、
FFⅣ的な「理想的なストーリー」を
貫いてここまで歩んできた方もいれば、
最初からロマサガ的な「自由なストーリー」を
ご自身で作ってきて、ここまで歩んできた方も
いるのではないでしょうか?

「レベル」は、上がりましたか?
「熟練度」は、積み重なりましたか?
「バラメータ」は、どうですか?
「ステータス」に、異常はありませんか?
「仲間」は、いますか?

時代的に言えば、
現実はいよいよロマサガ的な様相。
SNSにより、仲間を自由に組み、
自由に陣形を組んで、ことにあたる…。
そういうことがやりやすくなった時代です。

ですが、そういう「乱れた世の中」
「色々な制約が溶け出した世の中」
だからこそ、
FFⅣ的な美しい作られたストーリー、
作られた「虚像」(褒めています)に
人が惹かれるのも、また事実かと思います。

たった30年前には、
FFⅣが「王道」、ロマサガが「斬新」。
30年後の現在はむしろ
ロマサガが「王道」、FFⅣが「虚像」。

そういうことを考える時、
私は「盛者必衰」「諸行無常」を
感じずにはいられないのです。

さて、読者の皆様は、この先、
この世界というフィールドを
いかにロール(役割)をプレイングして
旅をしていきますか?
どんな仲間と、どんな陣形を組みますか?

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