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死んだら負け。生きろ。

まるで『もののけ姫』のポスターの
キャッチフレーズ
のように
生きた男がいます。

人呼んで、逃げの小五郎。
…あの名探偵コナンくんに
針でチクッと刺されて
眠りながら推理する人じゃないです。
あれは、毛利小五郎。

私が言っているのは、
幕末の志士、桂小五郎です。
後の木戸孝允(きどたかよし)

…この人、どうも
坂本龍馬とか土方歳三とかに
比べてドラマの主人公に
ならないんですよね。

なぜなら、非業の死を
遂げていないから。

坂本龍馬は、暗殺されます。
土方歳三は、五稜郭で戦死。
高杉晋作は、病気で維新前に死亡。
沖田総司も病死、近藤勇は刑死。
西郷隆盛は、西南戦争で自決し、
大久保利通は、西南戦争後に暗殺。
…他、多数。

劇的に死んでしまった人は、
ドラマになりやすいんです。
時代は違いますが、ほら、
織田信長の本能寺の変なんか
みんな大好きでしょ?

彼らに対して桂小五郎は、
死にません。逃げます。徹底的に。

この人、有名な吉田松陰と
同じ頃から活躍してますから
志士としての歴史は
とんでもなく長い。
当然、修羅場はたくさん潜ってます。
というか、この人の半生、
修羅場だらけです。

捕まる=死の、新選組がうようよの
幕末の京都でがっつり活動してますし、
自分の長州藩に戻っても
時々クーデターで幕府びいきの
藩政になったりしまして
とにかく命を狙われています。

でも、死なない。
同志は非業の死を遂げていくのに。

なぜか?
この人、おそらく異様に用心深く
自身の危機管理能力がピカイチ
だったからだと思われます。

剣術の腕は、坂本龍馬と
同じくらいあったそうです。
強いんです。でも無闇に戦わない。
時には変装する。逃げる。

『逃げるは恥だが役に立つ』を
体現したと言ってもいい人
です。
平匡さんやみくりもびっくりです。

ついに逃げ切って明治維新を迎えます。
ところが、その後があまり良くない。

愚痴っぽくなって、知り合いが
離れていってしまったそうです。
徐々に権力は、伊藤博文とか
山縣有朋とかそっちのほうに行く。
どうもこの辺りのイメージが強く、
また西郷や大久保の話のほうが
ドラマティックなイメージがあって
影が薄くなっていきます。

でも、ですよ。
私はそんな『逃げの小五郎』が
けっこう好きなんです。

彼は、死んだら終わり、
活動ができない、ということを
とことんわかっていた。

主君や目標のために
死ぬことが美徳とされた時代に。
あの動乱の、幕末に。

それでいて、世を捨てるのでなく
倒幕勢力の中心にどんと構えて、
陣営を取りまとめ、薩摩藩と結び、
ついには明治維新を成し遂げた。

生ききる。

彼の人生は、その大事さを
私たちに教えてくれている
ように思うのです。

(補足)

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