「鶏口牛後」という言葉がありますよね。

中国の戦国時代の頃と言えば
「秦の始皇帝」より前の時代、
『キングダム』のあたりの話ですが↓

始皇帝が登場するよりだいぶ前の戦国時代に
「蘇秦」(そしん)という人がいたんですよ。

本記事ではこの人に由来する言葉から、
個人や組織の「つながり」について書きます。

この蘇秦、やたらと話が上手い!
鬼谷先生、というちょっと怪しげな名前の
先生の下で「縦横の術」を学んだ、と
言われております。

縦横の術(じゅうおうのじゅつ)!

巧みな弁舌と奇抜な発想によって
各地の王様を説き伏せ、
あわよくば自分が高い地位に
昇ろうとするトークを行う者たちの技。

中国の戦国時代で「諸子百家」と呼ばれる
人材スキルのカタログ見本の一つ、
「縦横家」とも言われたりしますが、

蘇秦はこの「縦横家」の
代表的な人物の一人なのです。

タテとヨコ、これを巧みに組み合わせ
戦国の世で色んな国々が
いかにサバイバルするか、を説いていく。

蘇秦は、名前の通り
「秦」という強い国に対して、
どのように対応すべきかを各国に説きます。

『いやあ、秦って、えらく強いっスよね。
一対一、サシで戦ったら
絶対負けますよ。ええ。
…どうすればいいかって?
みんなで対抗すればいいんですよ。
六対一なら、勝てるんじゃないっスか?』

こんなに軽い口調ではなかったとは思いますが、
大意としてはこんな感じで
各国の王様を説いていきます。

西の国である秦に対し、
タテに並んでいる列国が連合して
秦に対抗していく!

これぞ縦横の術の「縦」、タテですね。

この策がうまくいき、蘇秦はめでたく
戦国七雄と言われた国のうち
秦以外を連合させることに成功し、

自らは六国の宰相の位につきました。

それで、このうち韓という国の王様を
説得する際に使ったのが、有名な

◆『寧為鶏口、無為牛後』

書き下すとすれば
「寧ろ鶏口と為るとも
(むしろけいこうとなるとも)、
牛後と為ること無かれ
(ぎゅうごとなることなかれ)」。

という言葉なのです。
後の世に「鶏口牛後」という故事成語になり、
現代の日本でも使われております。

超訳風に言えば

『にわとりの口のほうが
牛のお尻よりマシっスよね~。
ほら、尻、臭いし…。おならとかフンとか…。
でっかい牛、秦の家来に成り下がって
こき使われるようになるよりも、
たとえにわとりみたいな小さな国でも
一国の王様として自分のやりたいように
できるほうがいいじゃないっスか?』

確かに、と王様はうなずいた。

王様はその国のトップですから、
その地位を保ちたい、という心理に
うまく呼びかけた形です。
ここに六国の「合従」、タテの連合が
成立した、というわけです。

…ただし、この「合従策」は、
後に、もう一人の有名な縦横家、
「張儀」(ちょうぎ)という人によって
破られてしまいます。

彼は、タテではなく、ヨコです。
つまり秦と各国が個別にヨコにつながる、
「連衡」、ヨコのつながりを説いた。

『…蘇秦の奴がね、
「にわとりの口がいい」なんて
言っていましたけれども、
そんなに他の国、信用できますかねェ?
実は、鶏肉にされるかもしれませんよ。
秦が攻めてきた時に、見殺しにされるんじゃ?
それよりも強い秦と個別に手を結んで、
隣の国を倒したほうが良くないっスか?』

大意はこんな感じ。

タテのつながり、合従から各国を離反させ、
各々が秦とヨコのつながりをつけるように
説いていきました。
蘇秦の合従策は、ばらばらにされます。

タテとヨコの戦い。
合従と連衡。


そんなこんなを通して、
秦の始皇帝、『キングダム』の世界に
なるまでに、各国はくっついたり離れたり、
ごちゃごちゃの戦国の世が続いていったのです。

最後にまとめます。

この「令和戦国時代」とも言うべき
混乱の時代、読者の皆様は
どのような組織、どのような個人と
どんなつながりをつけていくでしょうか?


一人ひとりがSNSでつながりをつけられる
言わば「一人戦国時代」状態ですよね。
しかもこの戦国時代、一人ひとりの人間は
千差万別ですから、たぶん統一はされません。

「蘇秦」のように
「鶏口牛後」とばかりに
自分が自在にふるまえるつながり
つけていこう、とするも良し。

「張儀」のように
「寄らば大樹、秦の陰」とばかりに
頼りになりそうな強い組織や個人に
つながり
をつけていこう、とするも良し。

どちらが良い悪い、ではないと思います。

自分に合ったつながりを
ケースバイケースでつけていけばいい。
むしろ「あるつながりをずっと死守」
しようとするほうが、難しい。


個人として独立したフラットな関係、
組織の一員として上下関係で
ギブアンドテイクの雇用被雇用の関係、
どちらにも、メリットとデメリットがあります。

現に中国の戦国時代でも、
時にはくっつき、時には離れ、

秦の始皇帝というとびぬけた存在が
現れるまでは、合従も連衡も入り乱れて
ケースバイケースで国々は
生き残りを図っていったのですから…。

ただし。個人的には。

どんなつながりをつけようとも、
自立精神、健全な批判精神は
必要ではないか
と思っています。
言いかえれば「依存し過ぎない精神」
「思考停止、絶対服従をしない精神」
そういうものは必要かな、と思います。

どんなに優れた個人や組織でも、
盛者必衰、たけきものもついには滅びる。

未来永劫まで輝き続ける、
そんな組織はありませんので…。

さあ、読者の皆様は、この乱れた世の中で、
どんなタテとヨコのつながりをつけますか?
鶏口、牛後、大樹。どのように判断しますか?

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