緩急のつなぎ、実用論
知識や技能には二つの系統があります。
①ストレートにすぐに「役に立つ」もの
②変化球で「役に立つかもしれない」もの
この記事では、この二つについて考えます。
①は、いかにもな「実学」。
学校の教科で言えば、実技教科でしょうか。
体育・音楽・図工(美術)・家庭科など。
体を動かす、楽器を演奏する、
物を作る、料理をつくる…。
「うん、これは生きるのに、
人生を豊潤にするのに、役に立つね」と
誰もがうなずくような、わかりやすいもの。
剛速球のストレートです。
対して②は、多分に「教養」的です。
学校の教科で言えば、主要五教科
(なぜ「主要」なのかは各自でお考えを…)。
国語・算数(数学)・理科・社会・英語。
このうち、国語と英語は「ことば」、
算数(数学)と理科は「科学」、
社会は「世の中のしくみ」を主に学びます。
『え、読み書きそろばんって言いますよね。
じゅうぶんに「役に立つ」じゃないですか』
…確かに、小学校レベルですと
「役に立つ」知識だと言えるでしょう。
しかし、中学校レベルになると、どうか。
「関係代名詞」「イオン」「天保の改革」。
このあたりを、誰が見ても
全員の役に立つ!と言い切るのは、
いかにも後付け、怪しいのではないか?
もちろん、教員になるのであれば
その人の授業の役には立つ、と思います。
化学の研究者になるのなら、
イオンの知識は必須でしょう。
しかし、実技教科に比べて
なかなか全員の役に立つとは言い切れない。
変化球、なんですよね。
「将来的に、役に立つ、かもしれない」もの。
ここまでは、義務教育の学校の教科の話。
義務教育以外では、どうか。
①の代表的なものと言えば、
「専門学校」で学ぶような知識や技能でしょう。
PCや語学スキル、法律知識、資格の勉強…。
いわゆる「実践的な」「明日にも使える」
実用的なものです。明確です。
ストレートに「役に立つ」ことだけを、学ぶ。
②の代表的なものと言えば、まあ、
「オタク的な知識」ですね。
生活、本や遊びの中で、身につけるもの。
雑学、トリビアなんてのも含まれます。
「クイズ王」は尊敬はされますけれども、
「で、それを知って何のメリットが?」
と聞かれると困るような変化球も、多い。
ここまでを、まとめてみましょう。
①ストレートに「役に立つ」もの
◆「技能教科、専門学校的な知識技能」など
②変化球で「役に立つかもしれない」もの
◆「主要五教科、オタク的な知識」など
…私は「実用地歴提案会ヒストジオ」を
名乗っているので、
①②のどちらですか、やはり①ですか、
と聞かれることもあるのですが、
結論を言いますと、
「①②のコラボです」と、言っています。
つまり、①だけでもなく、②だけでもない。
その相乗効果をこそ、模索しているのです。
いわゆる「学校教育」だけですと
②に偏りがちなものです。
正しいか間違っているか、知っているかどうか、
トリビア万歳、微に入り細を穿つ的な人。
「戦国オタク」などを思い浮かべて下さい。
いや、自分の興味のあることを
突き詰めていくのは否定はしませんよ
(私も多分にその気があります)。ですが、
「それだけだともったいない」と提案したい。
②を踏まえた、①を活かす道を探る。
あるいは、①の観点から、②を見直す。
そういうことを、考えているのです。
よく野球のピッチングでは、
「緩急が大事」と言われます。
それと、同じです。
どんなに剛速球を投げる投手でも、
まっすぐストレートばかりでは
打者の目が慣れて、打たれてしまう。
一方、八十キロの緩いスローカーブの後に
百二十キロのまっすぐストレートだと、
打者は幻惑される、剛速球のように見える。
いかに、組み合わせるか、なのです。
(余談ですが、私の投稿ではやたらと
「たとえ」を出しているのも、
「たとえ」は組み合わせの鍛錬の
最たるものだと思っているからです)
さて、読者の皆様は、
①②をいかに組み合わせているでしょうか?
①のみ、②のみを、追い求めていませんか?
ちょこっと「日本教育史トリビア的」に言えば、
①の代表的な人物が「福沢諭吉」。
②の代表的な人物が「柳田国男」。
誤解を恐れずに一言でまとめるなら、
福沢は「とにかく役に立つことを教えろ」
柳田は「マニアックなことも大事でしょ」
そういう思想です。
①②どちらが良い悪い、ではないですよね。
どちらも一理ある、一長一短のお話です。
ならば、良いところどりしましょうよ、
というのが私の考えなのです。
実用、とは「即用」とは少し異なります。
何十年も前に身につけた知識が、
思いがけなく思い出されて役に立つ。
そんなことも、長い人生の中にはあります。
私も、小説を書き始めてから、
昔に身につけた色々が、つながってきました。
◆点と点をつなぐ
◆Connecting the dots
スティーブ・ジョブズさんの名言を引用して、
この記事を締めたいと思います。
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