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シェフの料理は、素晴らしいものですよね!

さすがは料理のプロ、食べる人がうなるような
渾身の下ごしらえ、絶妙の味付け、
目を奪われる盛り付け、心憎い給仕。
そのコース料理はまるで
オーケストラのように重層な音楽を
奏でているかのよう…!

同じように「情報のシェフ」の「記事」もまた、
素晴らしいものです。

さすがは情報のプロ、読む人がうなるような
渾身の下ごしらえ、絶妙の味付け、
目を奪われる盛り付け、心憎い給仕。
その作品や記事の構成はまるで
オーケストラのように重層な音楽を
奏でているかのよう…!

本記事は、情報のシェフについてのお話です。

優れた「書き手」というものは、
冒頭のたとえでも書いたように、
シェフの如き、名料理人の腕を持っています。

本来、知識や経験というものは、
土のついた野菜と同じ。

そのままではなかなか食べにくいもの。

それを「加工」することによって、
食べやすくする。
これが「名料理人」です。

そうですね、例えば、小説家を想像して下さい。
有名どころで、太宰治などを挙げましょうか。

『走れメロス』。教科書に出てくる短編。
あの作品の冒頭は、こうです。

(ここから引用)

『メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮らしてきた。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。』

(引用終わり)

どうです、この、ぐいぐい引き込み感!
食欲を増す「前菜」のような、
次の皿に期待させるかのような幕開け!

いきなり「メロス」ですよ。誰?ですよね。
そこに「邪知暴虐の王」。
怪しげな四字熟語の香辛料をぱらつかせ、
まがまがしいラスボス感が満載!

このパワーワードをいきなりぶっこんだ上で、
太宰、メロスの説明を重ねます。
「政治がわからぬ」「牧人」「遊んで暮らす」
この白い三連星で「邪知暴虐」に対比させ、
純粋で朴訥な、正義感の強い男を連想させる。
その人が「邪悪に対して敏感」なので、
「邪知暴虐の王」に対峙する…。

どうです、たったこれだけの文章で、
『走れメロス』のストーリーの骨格、
メロス(純真)VS王様(猜疑)という
構図を描き出している
ではありませんか!
すごい!

…国語の授業ではないので
このくらいにしますが、

私も、学生の時、初めてこの
『走れメロス』を読んだ時は、
国語の先生の説明を聞いても
「ふーん」という感じでした。

しかし遠く及ばずながら自分なりに小説を
書いてきた今であれば、
太宰治のカミソリっぷりがよく分かります。
なに、この斬れ味、こわい、と戦慄するほど…。
そうです、自分で「自炊」してこそ、
シェフの「凄腕」がわかる
、のです。
さっすが太宰治先生、かなわねえなあ、
と思うのです。

さて、情報のシェフと言えば、
小説家だけではありませんよね。

ユーチューバーもそうですし、
ブロガー、新聞記者、ルポライター、
さまざまな情報をさまざまな形で
下ごしらえし、味付けし、盛り付け、給仕する。

動画、音声、文章、それぞれ
コースの組み立てや味付けは異なるにしても、
「いかに情報の消費者に
『美味しく』食べてもらうか」
ということは
共通しています。
そう、情報のシェフは、巧みに情報を加工して、
素材の良さを引き出し、自分なりの味付けをして
その上で食べやすいよう、お皿の上に
盛り付けして出しているのです。

いわゆる「インフルエンサー」の方などの
表現を見れば、一目瞭然ですよね。

◆心を奪われる
◆クセになる味付け
◆素材の選択の確かさ …

「素材」重視か、「味付け」重視か。
ここでは、そんな対決構図が無意味になるほど。
優れた情報のシェフは、
「素材」も「味付け」も、すべて一流
なのです。

まとめていきます。

この情報爆発社会において、
誰でも情報を「発信」できるようになりました。

経験は、誰もが持っています。
優れた「素材」はみんなが持っている。

たとえ自分では土臭い、みすぼらしいと
思っている素材であっても、
誰かにとっては心奪われるもの、かもしれない。
いいものは、持っている。誰でも。

ただし。

惜しいかな、その素材を「料理」して、
すなわち「加工」して、
うまく他人の食卓に供することができる、
シェフレベルほどの腕前に達している人は
そうそういませんよね。
私なぞも、まだ、ほんの駆け出し。

だからこそネット上では、
「黒いシェフ」たちも『跳梁跋扈』しています。
ちょうりょうばっこ。
あえて太宰治先生にならってどぎつい
四字熟語を使ってみましたが、
『悪者が権力を得て、好き勝手に振る舞うこと』。

あなたほどは素晴らしい
知識や経験を持ってはいない人が、

その卓越した「情報の料理技術」をもって、
怪しげな情報商材や詐欺まがいのセミナーなどで
大儲けしたりしているのです。そんな世の中。
よく、聞きますよね。
言葉巧みに引き寄せられ、
ワンクリック、集会に誘われ
お金をふんだくられた、というようなことを…。

そんなことにならないためにも。
情報爆発の中で「自衛」するためにも。

情報をいかに加工するか?
それをまず「自分で」体験し、会得した方が
いいと、私は思うんです。

なぜなら、自分でやってみれば、
その裏側がわかりますから…。

下ごしらえ、味付け、盛り付け、給仕。
日々の下積み、地道な経験、
トライアンドエラーをしてこそ、
カミソリの斬れ味もわかる、のです。

…なぜ、私が小説を書いているのか。
なぜ、このようにリンクトインなどで
記事を書いて、発信しているのか。

下手は下手なりに発信して、
情報を加工して誰かに出す。
その過程でしか、情報のシェフには
なれない、と思っているから。
自衛もかねて。

名シェフになるのは遥か遠い道のりとしても、
「自炊」は今日からでも始められるもの。

最後に、読者の皆様に、おうかがいします。

自分の作った料理を、
誰かに食べてもらっていますか?
自分の書いた記事を、
誰かに読んでもらっていますか?
…試しに小説を、書いてみませんか?

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