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引用してみます。
『知命』という詩です。
知命、とは50歳の別名。
なんとなく、思い出しましたので。
じわじわくる詩です。

(以下、引用)

他のひとがやってきて
この小包の紐 どうしたら
ほどけるかしらと言う

他のひとがやってきては
こんがらかった糸の束
なんとかしてよ と言う

鋏で切れいと進言するが
肯(がえん)じない
仕方なく手伝う もそもそと

生きてるよしみに
こういうのが生きてるってことの
おおよそか それにしてもあんまりな

まきこまれ
ふりまわされ
くたびれはてて

ある日 卒然と悟らされる
もしかしたら たぶんそう
沢山のやさしい手が添えられたのだ

一人で処理してきたと思っている
わたくしの幾つかの結節点にも
今日までそれと気づかせぬほどのさりげなさで

(引用終わり)

茨木のり子さんは
1926年(大正15年)生まれです。
2006年(平成18年)死去。

ちょうど20歳くらいの
「一番きれいだったとき」
終戦を迎えます。
1949年(昭和24年)に
お医者さんと結婚し、
20代後半の1953年(昭和28年)に
『櫂』(かい)という
同人誌を創刊し、活躍しました。

しかし1975年(昭和50年)
50歳頃に夫と死別。
2006年にくも膜下出血で
約80年の生涯を終えられました。

20歳で終戦、
50歳で夫と死別、80歳で死去。

戦後の日本の
良いところも悪いところも
自分の感受性で詩に
表現してきた方です。

…さて、いつのまにか
2021年も半分終わって
しまいましたが。

読者の皆さんは
『まきこまれ
ふりまわされ
くたびれはてて』

いないですか? 大丈夫ですか?

人は、自分が調子の良い時は
自分を支えてくれる手に気づかず、
自分の調子が落ち気味な時に
支えてくれていた手に
ようやく気づくと言います。

逆に、あなたの周りには、
『まきこまれ
ふりまわされ
くたびれはてて』
いるような
人はいないでしょうか?

特に新卒の方などは、
先輩の手前、悩みがあっても
大丈夫ですよ!と言いがち。
4ヶ月目、五月病を抜け出して
これから!という時、意外と
ガクッと来がちなんですよね。
私の経験から言えば…。

さりげない優しい手を、
すっと出したいですね。

私もこの3ヶ月を振り返り、
困っている人はいなかったか、
自分がどう支えられてきたか、
思い出そうかな、と思います。
皆さんも、ぜひ。

↑『現代詩の長女』こと
茨木のり子さんの詩を
もう少し知りたい方はこちらの
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