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声優の小林清志さんが、亡くなられました。
2022年、89歳でした。

小林清志さんと言えば
『妖怪人間ベム』のベム役でも知られていますが
何と言っても『ルパン三世』の次元大介役
およそ五十年にもわたって、次元の渋い声を
担当されてきた業績に、自然と頭が下がります。

そこで本記事では、小林さんを悼みつつ、
『ルパン三世 カリオストロの城』の
キャラの立ち位置を分析
してみたいと思います
(なお、ネタバレしまくりの記事ですので、
未見(いるのか?)の方は、ご注意ください)

カリオストロの城↓

ルパン三世一味、味のあるキャラたちに、
巨匠、宮崎駿さんが独自の味付けを重ねて
作り上げた、名作のひとつです。

通常版のルパン、ピカレスクロマンとは
ちょっと趣が異なる
「センチメンタルなストーリー」
ではありますが、
金曜ロードショーなどでもたびたび放映され
広く知られている作品でもあります。

では早速、行きましょうか。
キャラの立ち位置分析!

まず、ルパン。そして次元、五ェ門。
このおなじみの三人は、
それぞれの特性を生かした凸凹トリオ
(最初はルパン&次元のコンビですが
半ばで五ェ門が加わる)。
この三人に、上下関係などありません。
ジグソー的な、柔軟でフラットな関係です。

それに対するはカリオストロ伯爵。
偉い人です。迫力あります。
でも偽札を作ったり、裏で暗殺したり、
けっこう分かりやすいワル、悪役です。
彼はピラミッド的な組織の上に立ち、
衛士軍団や暗殺者軍団などを操って
ルパンたちを抹殺しようとします。

味方と敵の、わかりやすい二つの陣営。
その間を、柔軟に動くキャラがいます。

一人は、ご存知「峰不二子」です。
妖艶で変装の名人、凄腕の女スパイ!
最初はカリオストロ伯爵家に
女秘書的な感じで潜入していますが、
ルパンがクラリスを助けに来る際には
マシンガンをぶっ放す女戦士に変貌。
最後のあたりは偽札現場を押さえる
女記者となり、偽札の原版をくすねる。
バイクに積んで「じゃあね~、ルパン」と
去っていきます。うん、かっこいい。

もう一人は言わずと知れた「銭形警部」です。
最初はカリオストロ伯爵をルパンたちから
守るために国際警察から派遣されてきますが、
何か伯爵に雑に扱われ、挙句の果てには
恐ろしい地下迷宮へと捨てられてしまいます。
使い捨て的なピラミッドの末端的扱い…。
しかしここでルパンと(一時)タッグを組み、
ともに脱出する、という胸アツな展開に!
最後は、峰不二子とともに偽札現場を暴きます。

そう、この作品は、
「ルパン一味 VS カリオストロ伯爵家」
という構図の上に、狂言回しとして
峰不二子と銭形が縦横無尽に動き回る
という形で話が展開されていくのです。

「…あのう、もう一人、重要なキャラを
忘れてはいないでしょうか?」ですって?

大丈夫、忘れてはいませんよ。
クラリス、この作品のヒロイン。

彼女はピラミッド的で封建的な環境、
カリオストロ伯爵との政略結婚から
逃げ出してきます。
ピラミッドの末端、女好きの伯爵の妻という
逃れがたい運命、牢獄の姫君という立ち位置から
逃れようとする
んですね。
それをルパンと次元が凄いカーチェイスで
救うところから、話が始まっていきます。

最後には、ルパンに「どろぼうを覚えます」
と言って、連れていくよう懇願する…。
それをルパンが「ばかいっちゃあいけねえよ」
と、優しく諭す…。
この「中年男の精一杯の見栄」が、
作品のクライマックスの場面の一つです。

つまりクラリスは「ピラミッド的」な
固定的で息苦しい環境から脱しようとして、
フラットで自由で「ジグソー的」な
ルパン一味に加入しようとするも、

ルパンから優しく諭され、
ピラミッド的な環境に戻り、そこで
己の役割と立ち位置を全うしようとする…
という動きをするわけです。

峰不二子、銭形、そしてクラリス。

この三人が立ち位置を変えていく
その過程こそが、作品のストーリーを
動かしている
、と言っても過言ではない。
もちろんその土台には、厳然たる
ジグソーとピラミッドとの戦い、
ルパン一味とカリオストロ伯爵家との戦い、
という構図があることは間違いないのです。

特に、銭形警部とクラリスの二人の
「抑圧と解放」これこそが、
この作品の肝であるように、私は思います。
銭形の名言「あなたの心です」も、
同じ立ち位置にいた二人だからこそ
わかりあえる、という構図なのです
(それに対して峰不二子は、
もはや「峰不二子という概念」と
言ってもいいほどの超越した存在ですが)。

以上、『カリオストロの城』の
それぞれのキャラの立ち位置を、
私の『ジッグラト・スペアリブ』モデルにて
見える化して表したのが、下の画像になります↓

また、このモデルについては下記の記事を。
よろしければご覧ください↓

※この解釈はあくまで私の現時点での
 主観的な分析であり、
 見方によって柔軟に変わり得ることを
 特に補足しておきます。
 ぜひ、皆様も皆様の視点によって
 分析してみてください。

…余談ですが、優れたストーリー、作品には
このそれぞれの立ち位置を代表する
キャラが登場し、それを移行する中で、
またそれぞれの立ち位置とのからみの中で、
ストーリーが生まれていきます。


例えば『ドラえもん』においては、
モブでいじめられっ子の「のび太」、
ピラミッドの中の有象無象の一人の存在が、

「ドラえもん」という名伯楽と
その秘密道具によって引き上げられ、

「ジャイアン」という唯一無二の存在、
やりたい放題、傍若無人、
ジグソーでアドリブ的な
何をしでかすかわからない孤高の存在と
渡り合えるような力を「一瞬だけ」身につけ、

そのうちに図に乗って悪ノリし、失敗して
また弱い立場に戻る…というお約束で終わる
偉大なるマンネリのお話です。

そう、のび太が「立ち位置を変えようとあがく」
その移行こそがストーリーの肝
になるのです
(映画版ではちょっと立ち位置が変わりますが)。

最後に、読者の皆様におうかがいします。

皆様のキャラの「立ち位置」は、どこですか?
どのように変遷、移行してきましたか?
それとも、安住してきましたか?

移行するなり、安住するなりに、
他の立ち位置にいるキャラとの
対比と関係によって
自分なりのストーリーが描けると思います。

声優の小林清志さんは、
五十年にもわたって次元大介を演じ、
そのキャラを唯一無二のものへと
磨き上げてきました。

その小林さんの生き様自体もまた、
一つの名作である
ように、私は思うのです。

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