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どんなに優れた組織のトップがいても、
その指示がしっかりと部下に伝わらなければ
良い結果を出すことはできませんよね。

現在はリモート会議などで
離れていても画面上で顔を合わせて
話すことができます。
プレゼンを、動画で視聴することもできる。
ところが昔は、遠く離れた人に対しては
アナログな方法で伝えるしかありません。

また、わかりやすい指示ならまだしも
よくわからない指示を出すトップもいます。
往々にして、英雄というものは
天才的なところがあります。
常人には理解しがたいアイディアを
よく口にするものですから…。

本記事は、そんな天才的な英雄と、
部下とをつないだ人のお話。

…天才的な英雄、真っ先に思い浮かぶのは
私なら、ナポレオン、ですね。

ご存知『余の辞書に不可能の文字はない』の人。
(直訳すれば
『不可能という言葉はフランス的ではない』)。
フランス革命後のフランスで台頭して、
連戦連勝、「皇帝」にまで成り上がりましたが、
最後はワーテルローの戦いに敗れて、
絶海の孤島、セントヘレナ島に流罪となった人。
まあ、世界史上トップクラスで
有名な天才&英雄です。

この人の下には、当然ながら
優秀な部下・将軍がたくさんおりました。
皇帝に即位した際には
26人もの部下を、元帥の位に就けたそうです。

その中に、ベルティエ、という人がいました。

ルイ・アレクサンドル・ベルティエ。
1753年~1815年。
1796年のイタリア遠征から、
16歳ほども年下のナポレオンの部下になり、
参謀長を務めるようになった人。

…ナポレオン、天才にありがちなんですが、
自分の頭の中で考えて、
それを口に出すんですけれども、
よくわからないことも言い出すんです。
この若造、何を言ってるんだ?
最初はベルティエもそう思ったことでしょう。

しかし徐々に彼は、
ナポレオンの天才性に気が付いていきます。
彼はナポレオンの言葉をうまく解釈し、
わかりやすくして、部下たちに伝えました。
ナポレオン語の翻訳機、部下との接着剤…。
もし彼がいなければ、ナポレオンの優れた作戦も
うまく伝わらず、勝利もなかったかもしれません。

勇猛果敢な実戦派の将軍が多い中で、
彼の存在は異色でした。
一癖も二癖もあるような人ばかりですから、
ベルティエ、ぶつかります。
彼自身も、蒸留水のような無色透明ではなく、
人間臭い面(人の好き嫌いが激しいとか)
が、けっこうあったようなのです。

ですけれど、この人が組織内にいたからこそ、
色々とぶつかりながらも、全体としては
円滑に作戦が実施できた、とも言える。
こういう人、組織内では
板挟みになって苦労したりしますが、
とても得がたい存在です。

さて、ナポレオンが皇帝になった後。
元帥の一人となり、彼の施策を支えるべく
奮闘していたベルティエだったのですが、

ナポレオンの最大の失敗とも言える
「ロシア遠征」で、二人は仲違いをします。
「こんな遠征、うまくいくはずないっすよ!」
「てめー、俺の作戦にケチつけるってのか!」

あえて超訳イメージだと、こんな感じ。
絶対的な独裁者に仕える人の
心労は、今も昔も変わりません。

ベルティエはもともと、モスクワ進撃には
反対していたそうです。
このロシア遠征大失敗が響き、
ナポレオンは没落、強制退位させられて、
エルバ島という地中海の島へと流刑になります。

上司がいなくなったベルティエは、
復活した国王、ルイ18世に仕えました。

…ところがですね、不屈の男ナポレオン、
何と島を脱出してきて、再起を図るんです。
ベルティエにも、手紙が来ました。
「もう一回頑張るから、力を貸してくれよ!」

ベルティエは、どうしたか?

…今は、ルイ18世に仕えている身。
…しかし、ナポレオンには恩義もある。
…どうしよう?
かなり、悩んだそうです。

悩んだ挙句に、彼が取った行動は。

…どちらにも属さずに、
家の二階から飛び降り、この世を去りました。

自殺説、他殺説、色々とあるのですが、
彼が悩んでいたことは、事実でしょう。

1815年。ワーテルローの戦い。
再起を懸けたナポレオンの最後の大合戦。
しかしその側に、ベルティエはいません。
部下たちとの連携がうまくいかず、
彼は負けてしまい、今度は大西洋の孤島、
セントヘレナ島へと流されてしまいました。
風雲児ナポレオン、百日天下の終了です。

…後にナポレオンは、
セントヘレナ島での回想で
このように語ったと言われています。

『ベルティエなら(確実に伝えるために)
1ダースの伝令を出しただろう』
『もしベルティエがいたならば、
私はこの不幸に会わなかっただろう』

本記事では、ナポレオンの参謀長、
ベルティエについて簡単に書いてみました。

読者の皆様の組織では、いかがでしょう。
ベルティエ的な人は、いますか?
皆様自身の側に、優れた参謀長はいますか?
うまく他人に、伝えられていますか?

どんなに素晴らしい
天才的な作戦、アイディアであっても、
それが関係者や世の中に
きちんと伝わらないと、活かせません。

いかにしっかりと伝えられるどうか。

一人で活動するならば、
あなたの側に、ベルティエを。
複数で活動するならば、
組織に一人、ベルティエを。

彼の事績から、そういうことを感じました。

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