成功はその瞬間から毒性を持つ。
そのような記事を書いた。

こんな話が、ある。

…うさぎが木の株で転んだ。
農民はたまたま獲物を得た。
それからその農民は、
畑を耕すことなく木の株を
ずっと見守るようになった。
畑は荒れ放題となり、
彼は笑い者になった。…

『守株』『株を守りうさぎを待つ』
という故事成語の由来。
今日では「古い習慣にこだわる」
という意味で使われる。

そんな幸運が
何度も起こるわけないだろ!
棚からぼたもち的な、
ラッキースケベ的なことが
何度もあるわけない!

…そう嘲笑うのは自由。しかし、
平成の30年とは、
実は『守株』の時代だったのでは?

というのが今回の記事だ。

たまたまの成功、とは何か?
言わずもがな、昭和末期の
『バブル経済』である。

中年以上の皆さん、覚えてますか?

イケイケドンドン、
ギロッポンでシーメー、
会社の経費で何でも落ち、
タクシー券は使い放題…。
バブル伝説は今では夢の中の話。
しかし、実際にあった話だという。

汗水垂らして働かなくても
株や土地の価格が上がっていく。
放っておいても獲物が
取れ放題のようなものだ。
…そりゃ「財テク」するよね。
日本は世界の富を集め
ジャパンアズナンバーワン
たてまつられた。

…だがそんな幸運は
永遠に続くはずがない。
バブル崩壊
下がらないはずの地価は下落、
つぶれないはずの銀行がつぶれ
世界は、変わった。

当時の人々は悔い改めて
一億バブル総懺悔、
組織のあり方も働き方も
業界のしきたりも
何もかもが、変わった…

わけでは、ない。
それは、読者の皆さんが
よく知ってらっしゃると思う。

多くの組織では、
IT革命! 聖域なき構造改革!
などの声に満ち溢れたが、
その多くが
建前的なものに終わったのだ。
なぜかって?
心の内側で、
もう一度バブルが来ればいいなと
思っていた人が多かったから。
先頭に立ち、汗をかいて
未開の地を開拓する人が
少数だったから。

これこそ、成功の毒だ。
うまくいった経験は、麻薬。
そうそう全員の心の中まで
一新・浄化されるわけは、ない。

もちろん、IT業界などで
新たに勃興した組織ならば
最初から意識が違うのかもしれない。
しかし、平成で成功したこと、
それ自体も、未来には毒になりうる。
ITバブル、なんてのもあった。
何十年も経った現在でさえ
バブルよもう一度…!の人がいない、
とはとても思えない。

現在、令和の時代。ようやく、
『木の株を守ってもうさぎは来ない』
という人が増えてきた、ように思う。

平成時代とは、この『守株人口』が
徐々に減ってきた時代とも言える。
失われた10年が、
20年、30年になるにつれて、
護送船団的意識を捨て
自分なりの畑、自分だけの畑を
耕す人が増えてきたのだ。

SNSで投稿を始めた皆さんは、
そんな耕作者の一人だ。
木の株を根元から抜き、開拓中だ。

私も及ばずながら、
耕していきたい。

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