見出し画像

小説「FF14光のお姉さん - 夢と現実の狭間で」プロローグ

プロローグ

朝のラッシュアワー。新卒のOL、白笛リコはいつものように電車に乗り込む。彼女は美術館で働く、その極めてオタクで陰キャな性格から、周囲とは一線を画している。今日も、彼女の視界はスマートフォンの画面に固定されていた。車内はいつも通り、各自がデジタルデバイスに没頭している風景で満たされている。

リコはふと、自分の行動を顧みる。

「ねえ、こんなにみんなデジタルに依存してるけど、これが本当にいいのかな?」

リコは窓に映る自分の反射を見ながら独り言を漏らす。向かいの座席には、オンラインミーティングに参加しているサラリーマン、動画を楽しむ学生、電子書籍を読む老人が混在している。技術の進化により、同じ空間にいながらも、個々が完全に異なる活動に没頭できる時代が到来している。

その中で、一人の女子大生が目立っていた。彼女はVRヘッドセットを装着し、手にはモーションコントローラーを持っていた。この行為が周囲がどのように見えているか分からない中で行われているため、一般的には少々場違いかもしれない。しかし、彼女は自分の世界に没頭し、仮想空間で友人たちと交流しているようだった。

リコはその場面に苦笑いを浮かべた。目の前の技術が進歩する光景は確かに新鮮で、彼女の好奇心を刺激した。
「時代は変わるけど、マナーってどう変わっていくんだろうね?」
彼女は心の中で問いかける。これらの技術がどれだけ日常に溶け込んでいくのか、そしてそれが社会のルールにどのように影響を与えるのか、その答えを見つけるためには、もっと多くのことを学ばなければならないと感じた。

家に帰ってからその様子をオンラインフォーラムで話題にすると、予想外に多くの同感と、時代に合わせた新しいマナーの必要性についての意見が交わされる。
デジタルネイティブの世代からは、「そういうのもありじゃない?」というリアクションが返ってくる。
日々、デジタル化が進む世界で、古い常識が新しい形で再解釈されていく様子に、リコもまた適応していかなければならないと感じる。



夜、キッチンで食事を作りながら、スマートスピーカーから流れる最新のポッドキャストに耳を傾ける。
料理中も情報をキャッチアップできる便利さに、改めて現代の生活の便利さを実感する。
その日の夜、リビングの大画面で新しいストリーミングサービスのドラマシリーズを視聴することにする。

登場人物たちがデジタル技術を駆使する様子を見ながら、自分もデジタルの波に乗ってみたいと思い、最近話題の仮想現実ゲームの体験版をダウンロードしてみることにする。
仮想現実ゲームの世界では、自分のアバターをカスタマイズし、世界中のプレイヤーと交流することができる。

キャラクター作成の画面に映る自分だけのアバターを見つめながら、リコはこれから始まる新たな冒険に胸を躍らせる。
彼女は画面を通じて、自分だけのキャラクターを慎重に選び、その外見や装備をカスタマイズしていく。
彼女が選んだのは、巴術と呼ばれる秘術を使い、使い魔を操るソーサラーの姿だった。

この瞬間、リコはただのオフィスワーカーではなく、広大な仮想世界「エオルゼア」を舞台に冒険を繰り広げる光の戦士へと変身するのだ。

「これで完璧…。」リコが満足げに呟くと、画面に新たなメッセージが浮かび上がる。

「エオルゼアへようこそ、光の戦士よ。あなたの冒険が今、始まる。」




・・・息を呑むリコ。



彼女の心は高鳴り、同時に少しの不安も感じていた。
だが、画面を通じて繋がる何千もの他のプレイヤーたちが同じように自分のキャラクターとともにエオルゼアの地を駆け巡ることを思うと、その不安も次第にわくわくへと変わっていった。

そして、彼女は心の中で決意を新たにする。
私が選んだ仮想現実ゲームの名前は「ファイナルファンタジー14 新生エオルゼア」。そして、私が操るのは、この可愛らしくちっちゃな冒険者、種族はララフェル。
この仮想世界での私の名前は...

Rico Whitflute(リコ・ホワイトフルート)。

現実の私の名前とあまり変わらないけれど、何となくシンパシーを感じてしまう。

キャラクターの設定には、想像以上に時間がかかった。髪の色から、髪のデザイン、アクセサリーの一つ一つに至るまで、細部にわたりこだわり抜いた。その結果、3時間もの時間が経過してしまっていた。画面上のRicoは、私が思い描いた通りの勇敢で可愛らしい戦士の姿で、新しい世界への扉を開く準備が整っている。

しかし、現実世界の時計は容赦なく進む。明日も早起きが必要だという現実が、ゲームの興奮を少しだけ冷静にさせた。
「今日はこの辺で終わることにしよう」
と自分自身に言い聞かせる。ログアウトする前に、Rico Whitfluteがエオルゼアの広大な景色を背に立つ姿をスクリーンショットで残す。これが、私の新たな冒険の第一歩だ。

画面が閉じると、部屋の静けさが戻る。キーボードの光だけが、まだ何かを始めようとする私の心を照らし続けている。そして、その光は次第に、明日への期待とともに静かに消えていった。

次回に続く…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?