「ま、いいか。と欠けてゆく月」ヒスイのほんのりラブ410字⑤+月俳句

夕食後、一緒に暮らしているカレシが言った。
「おまえさ、トイレのカレンダーみてるか?」
「え? うん、まあ」
「よく見ろよ、すごい良い格言が書いてあるぞ。
先月は『適度な運動で、適正体重を維持しましょう』
今月が『寒くなってきたら、尿トラブルに注意しましょう』
来月は『小さな変化にも注意して、健康を維持しましょう』

な。ぜんぶ大事だろ」
「……そだね。獣医さんが毎年くれるカレンダーだけどね」
「獣医? 犬用か」
「猫かも」
「ちぇっ。ま、いいか」
ガラリと彼はベランダに出る窓を開けた。

「来いよ、442年ぶりの 皆既月食と天王星食だぞ」
「次のときはもうどっちも、生きていないね」

彼がくしゃみをひとつする。思わず笑った。

「なんだよ」
「なんでもないよ」

ふたりで夜空を見上げる。雲もない空に、ゆっくりと欠けてゆく月が浮かんでいた。


こういう男と、ひと夏を過ごしました。
こういう男と、この冬も暮らすことになります。


ま、いいか笑。

【了】(改行含まず406字)


本日の410字は、
すべて実話です笑

皆既日食、ご覧になりましたか?
次はもう生きていないと思うと、
なんだかしみじみと、月の大きさを感じました。

では。
また明日。


「欠けてゆく月を見上げて二人をり」
(かけてゆくつきをみあげてふたりをり)
季語:月

※※こちら、修正を入れてもらって

「欠けてゆく月をふたりで見上げをり」
が、最終形となりました。

はー。すっきりしました!

#俳句幼稚園


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