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「珈琲と機械油のかほり溶けーー」ヒスイの秋短歌+早暁ショートショート

「珈琲と機械油のかほり溶け
 きみの輪郭たちあがる五時」ヒスイ

(コーヒーときかいあぶらのかおりとけ
  きみのりんかくたちあがるごじ)


朝の五時。
うすく青い空気が層をかさねている時間に、ふと目が覚めた。
ベッドの足元には猫がいる。いっぴき、にひき。
人間より高い体温が、静かに呼吸している。
そして隣からは、むとんちゃくで、健やかな寝息が聞こえる。

息にまじって、機械油の匂いがした。
このところ彼はふるいバイクを直している。昨日も遅くまでバラしたり組みなおしたり。
指先に、気負いと匂いがのこっているのだろう。

『おれ、あのモンキーだけは、もう目をつぶっていても組みなおせるわ』

笑ったまま彼は寝入ってしまった。
だから寝息が、笑い声によく似ている。
むとんちゃくで健やかな笑い声に。


いま、ベッドには猫と猫と機械油のにおいがする男がいる。
外はうす青い早暁の玻璃。
私はここへ、完璧を添えるために起きだした。

キッチンへ行く。珈琲を落とす。
猫たちがやってくる。
やがてモンキーマニアの男が、寝ぼけながらやってくる。

早暁の魔法で珈琲と機械油の匂いが溶けまじり、彼の形に変わって、立ち上がる。


「おはよー。その珈琲、おれの分もある?」
「ないよ、ぜんぶ飲んじゃったよ」
「まじかー。もういちど、落とすかー」


日曜の朝。


「珈琲と機械油のかほり溶け
 きみの輪郭たちあがる五時」ヒスイ

【了】

本日も、小牧幸助さんの #シロクマ文芸部  に参加しています。


短歌に添えたショートショートでは、朝の五時、にしましたが。
よく考えたら。夕方の五時の風景としても、しっくりくるな、と思います。

どちらでも、読む方の心地よいように、お読みください。
明日も多分、何か書きますよ(笑)。

ヒスイとはもう、そういう人間らしいです(笑)
書きたいの。読みたいんですよ、それだけなの(笑)

ちなみに、作中のバイク、モンキーとは、こういうやつです。
50万弱で買える50㏄のバイク。
ぶっちゃけ、ケロリンが中古で安く狙っております(笑)
むかし乗っていたんだそうです。

画像は公式サイトよりお借りしました↓↓↓

では。また明日ね💖

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