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Pop!_OSに移行する「11の理由」

母艦のUbuntuデスクトップと併用して、ここ暫くPop!_OSをラップトップで同じくらいの頻度で使っていました。結果、デスクトップのほうもPop!_OSに移行することにしました。ZBrushやBlender、3Dプリントなどのモデリング環境も含め全てPop!_OSへ全面移行です。
(※ちなみに私のメインOS変遷)
・Mac OS
・Mac OS X
・Ubuntu
・macOS
・Windows
・Ubuntu
Pop!_OS(←いまココ)

Pop!_OSはただのUbuntuクローンではない

使い込んでいくうちに確信に変わっていったこと。それは、

「Pop!_OSはただのUbuntuクローンではない」


ということです。
実は最初、私は「Ubuntuベースの派生OSのひとつ」というイメージを持っていました。なのでメインではなくサブ的に使う予定でした。ところが、使いながら色々調べていくうちに私の中で当初のイメージが完全に覆りました。以前も書きましたが、

明らかに本家Ubuntuを超えている

と感じます。ということで、Ubuntuから完全移行することにしました。以下、移行の理由を挙げてみます。

(理由1)NVIDIAドライバーとの親和性が高い

Pop!_OSにはデフォルトでNVIDIAドライバーが入っています。そしてメーカーとして親和性のブラッシュアップに注力しているのが分かります。これが移行の一番大きな理由です。

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Pop!_OSの基本コンセプトは「開発者・クリエイター向けのOS」です。本家Ubuntuが様々な幅広いユーザーを対象としているのに対し、Pop!_OSはエンジニア開発者、クリエイティブ系、コンピュータ・サイエンス系のプロフェッショナルをターゲット層にしています。 Pop!_OSの開発元のSystem76のハードウェアはPixarで導入されてたりしていることからもターゲット層が分かります。

さらに、いろいろなサイトで情報を貪ると、ゲームユーザー、ゲーム市場にも重きを置いているのが分かります。このあたりは海外有名Youtuberチャンネルで取り上げられたりしています。ここ最近急速にシェアを伸ばしているのはこれが一番の理由だと思われます。

UbuntuではNVIDIAドライバーの扱いはオプション的です。入れても入れなくても良い。そのため自前で追加したり管理したりするわけですが、最新ドライバにアップデートする際に一度デスクトップ環境が立ち上がらなくなった事があります。要は使う側の情報収集力とスキルが多少要求されるわけです。

その点Pop!_OSはデフォルトでNVIDIAドライバーと管理アプリを組み込んでおり、特に何もしなくてもNVIDIAのGPUが使えるようになってます。さらにラップトップではAMD RadeonとのハイブリッドGPU環境もサポートしています。この辺りの積極的な姿勢に惚れました。

(理由2)最新ハードウェアへの対応が早い

(理由1)に関連しますが、GPUだけでなくCPUなど最新のハードウェアへの対応が早いです。Ryzenとの相性問題への修正にいち早く対応し本家にポートしたのもPop!_OS開発チームでした。自社で最新版Ryzenを搭載したワークステーションを開発・販売している強みが大いに活かされている事例だと思います。

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System76は単なるLinuxメーカーというよりも「オープンソースメーカー」です。自社ブランドのハードとソフトを組み合わせた展開での強みから、「Core boot」と呼ばれるブートシステムを自社開発したりしています。自社開発のPop Shellなども他のOSでも使える形でオープンソースとして公開しています。そしてさらには自社ハードウェアデザインまでもオープンソース化している徹底ぶり。

エンジニアチームのメンバーはUbuntuのほかelemetary OSなどの開発にも関わっており、リーダーのJeremy氏はなんとフルスクラッチでオリジナルUnix互換カーネル(Linuxではない)を開発しています。(ちなみに開発はRust言語のようです)わたしが「ただのLinuxメーカーではない」と感じたのはこのあたりに起因します。

つまり、Pop!_OSの開発チームは

Linux界の中でも屈指のトップクラスギーク集団

であるわけです。
そのようなチームが開発するOSが面白くないはずがありません。

(理由3)インストールが超簡単

インストールも超簡単です。最近のMacやWindowsより簡単だと私は感じます。Linuxは歴史的にインストールが難しいイメージがあります。実際、ハードウェアの相性によって難があることが多いです。以前の記事にも書いたように、UbuntuではNVIDIAドライバとの相性によってインストールでコケる場合があり、最悪デスクトップが立ち上がらない現象にも遭遇する場合もあります。(回避方法はありますが、情報交換フォーラムやYoutubeがなければどうなったことやら)

Pop!_OSはそのイメージを覆してくれるかもしれません。
NVIDIAのGPUでも、NVIDIAとAMDのハイブリッドでも、問題なく立ち上がり、全く問題なくインストール出来ました。しかもインストールは数ステップで終了します。素晴らしい。

ブータブルUSBも優秀です。
使いやすく、パフォーマンスも良い。インストール前に前のUbuntuシステムが入っているドライブからデータを移動するためにUSBで立ち上げて作業をしていましたが、さくさく作業出来ました。USBから立ち上げているのを思わず忘れるくらいです。システムに標準で入っている「USB Flasher」でブートメディアUSBを作るのも簡単です。

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ブータブルメディアの作り方はこちら↓

インストール時にディスクまるごと暗号化出来る機能も備わっています。よりセキュアにしたい人に取ってはありがたい機能と思います。

インストールが簡単でブートメディアが優秀ということは、システムが調子悪くなっても簡単に早く復旧出来るということに繋がります。そのあたりも大きな安心感につながります。

(理由4)WINE環境に力を入れている

前述のNVIDIAやゲーム市場をターゲットにしているのとも関係しますが、SteamやLutrisなどのWINE(Windowsアプリ互換レイヤー)実行環境にも力を入れているのが分かります。

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私はゲーマーではありませんが、ゲーム分野にも興味を持っています。理由は、私のやっているモデリングの分野とクロスオーバーする事がたくさんあるからです。

Linuxでのゲーム環境が進化して強力になると、当然、LinuxでのZBrushやBlender環境も強力になることに繋がります。これらは全てCPU・GPU・WINE互換性に依存するからです。

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ZBrushをWINE環境で本気で使おうと思う人はかなり少ないかもしれません。ZBrushCentralのスレッドを見ても一部の熱心な人達はいますがかなり少ないので世界的に見ても非常にレアでしょう。しかし私は単なるキワモノ扱い的な興味本位や実験的な導入ではなく、本気で作品の制作目的で使ってます。

互換レイヤーを介するというのはMacでいえばRosetta2でインテルMac用のアプリを動かしているような感じでしょうか。なので正直、必ずしもWindowsと比べてベストパフォーマンスを引き出せるわけではありません。Lightboxが一部不具合があったり、Decimation Masterのパフォーマンスが若干遅かったり(CPUクロックをフルで使い切らない)します。

これらマイナス面を差し引いても、私はLinux上でZBrushを使うことに意味と価値を見出しています。前述のようにマルチコア最適化が進んでいない一部のプラグイン機能のパフォーマンスが遅いものの、ブラシの反応、タッチ、画面上のオブジェクトのハンドリングなどはほとんどの作業においてWindows上とほとんど変わりません。Mac版のようにZColorがフルスクリーンで使えないこともありません。クラッシュ頻度が減った感がありますし、トータル的に心地よい環境の中で使用するのは快適です。

また、ワークフローのパイプラインはZBrushだけではありません。
Blenderをベースに添え、ZBrush、CHITUBOXという流れで制作を行います。それ以外にもZBrushやBlenderを立ち上げっぱなしのまま、合間をぬってこうやってnoteに記事を書いたりもします。他にもやることが沢山あり、それら全てを同時進行で行える環境が必要です。ZBrush以外にもそれを取り巻くトータル的に居心地のよく集中出来る制作環境づくりが大事なわけです。それがLinuxに移行した最大の理由でもあります。

そのためにはWINEの進化は必須です。ZBrushよりもマーケットが大きいゲーム市場の活性化も後押しには必須、というわけです。


(理由5)コアがソリッドでカスタマイズに強い

最初に余談ですが、私の中では
カノニカル・Ubuntu=Linux界のMS・Windows
System76・Pop!_OS=Linux界のApple・macOS

というイメージです。

Ubuntu開発元のカノニカル社はエンタープライズ向けクラウドとUbuntuというビジネスモデルです。とてもマイクロソフト的です。近年マイクロソフトがWSLでUbuntuをWindowsに導入しています。このあたりのコラボを見てもお互い似たもの同士で方向性が一致するのでしょう。

そのマイクロソフト的なカノニカル社が開発するUbuntuは、LTSと半年ごとのリリース形態を取っており、誰もが使えるOSとして汎用性が高く、最大公約数的にとても使いやすくパッケージ化されています。安定版がリリースされる時点での既存のハードへの対応が最優先、様々なユーザー層へのサポートを幅広くカバーしており、とてもWindows的です。

そのようなメリットがある反面、最新ハードへの対応が遅れがちです。これは安心・安定とのトレードオフで仕方がない面もあります。なので最新のTipsをもとにシステムをカスタマイズしようとすると不安定になる場合が多々あります。

System76はハードとソフトウェアを作るメーカーです。その点がまずApple的です。古いコードや仕様を削ぎ落とし、コア部分のソリッド化に注力しています。方向性としては古いコードなどは切り捨てて軽くソリッドにして最新ハードに対応していく方針のようです。UbuntuをベースにしているためLTSを挟む縛りはあるものの、ローリングリリースの形態もとっており、最新ハードに対して自社独自の攻めの姿勢を感じます。このあたりのソフトウェア開発の方向性もMac的です。

ハードウェアに近いレイヤー部分の開発力があるメーカーなので新しいハードや新しい方向性でのカスタマイズにも比較的耐えてくれる感があります。

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(理由6)起動が早い

起動が早いのもその辺りの姿勢に起因するようです。上記に書いたようなことを Ubuntu上と全く同じような事をしてもキビキビと立ち上がってくれます。

理由の一つに「伝統的ブートローダーGRUBを切り捨て独自ブートローダーを実装した」というのがあります。

Pop!_OSの起動に向かう力が強いので、Windowsとデュアルブートにした場合BIOSに入ることが難しい場合があります(F2キーやEscキーを連打で対応)デュアルブートしたい場合は伝統的なGRUB採用のディストロがいいかもしれません。

Linuxオンリーで行くならPop!_OSは最強の起動環境と思います。

(理由7)ファイル共有が超簡単

これまでいろんなOSを使ってきましたが、ダントツで「最もファイル共有が簡単」です。

サーバー的な機能はオプション扱いになっているためインストールする必要がありますが、Terminalで

sudo apt install gnome-user-share

これだけ。準備OK。共有設定を開くとファイル共有機能が追加されています。これのファイル共有スイッチをポチッとONにするだけでOK。

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これだけで同じネットワーク上のマシンから「Public」フォルダにアクセスできるようになります。


(理由8)タイル表示機能がイイ

以前にもこちらの記事で書きましたが・・・

Ubuntuでは別途インストールする必要のあるPop Shellが標準で搭載されています。2つのウィンドウ表示方法を切り替えることが出来ます。その大きな特徴がこの「タイル表示機能」です。これが、非常に良い。慣れると、このタイル表示機能のないOSが寂しく感じます。ウィンドウ操作が1つ次元が上がった感さえします。

(理由9)ショートカットがイイ

詳しくはこちらを見るほうが早いですが・・

Ubuntuと違うのがこのキーショートカットです。これがシンプルで理にかなっている、と感じます。

・Super + T でTerminal
・Super + F でFiles(MacのFinder、Winのエクスプローラー)を開く

は最初にわかる違いです。これら2つは使用頻度が高いショートカットですが、TerminalはUbuntuよりひとつキーが少ないので使いやすく快適。Filesはアプリとして「Super + 1」で起動するのではなくシステム機能の一部として起動する感じが好みです。

ちなみにPop ShellをインストールするとUbuntuでも自動的にこれらのショートカットキーになります。

(理由10)UbuntuのTipsを利用できる

Pop!_OSは2017年に誕生したばかりの若いOSです。しかしUbuntuベースの強みを活かし、Ubuntuコミュニティで蓄積されたTipsやノウハウを共有したり取り込んだり出来ます。ユーザー数や実績の積み重ねが大きいUbuntuコミュニティの知的資産を共有できるのはアドバンテージです。

ただ、このまま成長して独自進化が進んでいくと、このTipsやノウハウも逆転していくかもしれません。すでにディストロウォッチでの人気はUbuntuを上回っており、ディストリビューションの乗り換えが気軽に行われる(?私のイメージです)Linuxコミュニティですから、Pop!_OSのほうがノウハウも活性化する可能性もあります。

(理由11)パッと見と名前がいい

最後は超主観的で感覚的な感想ですが・・・

「OSのパッと見の印象が非常に良い」
「名前が読みやすい・言いやすい・覚えやすい」

です。

パッと見で感じる直感って大事です。というか、少なくとも私は他人の理屈よりも自分の直感を大事にしています。

読みづらい名前が多いLinuxディストロの中でもダントツに読みやすいです。

2大OSが「マック!」「ウィンドウズ!」とワンパンチで世界中の老若男女が読めるネーミングなのはちゃんと意味があると思ってます。

「ポップオーエス!」

うん。読みやすい。一発で覚えられて分かりやすい。イイじゃないですか。

まとめ

以上、「メインOSをPop!_OSに移行する「11の理由」でした。長くなりましたが、それだけ熱がこもっている、という事です。
私自身正直、Mac OS Xの登場のときに近いワクワク感を久々にOSに感じています。これからLinuxを使ってみたいと思う人は、UbuntuよりもPop!_OSを強力にオススメします。既存のベテランLinuxユーザーからもぜひ移行する人が増えてほしいと思います。特に「作る系」の人にはオススメです。最近はDavinci ResolveとかLightworksとかの動画系アプリもLinux版も出てきましたし、動画制作にも良いと思います。余計な常駐アプリや集中を妨げるアラートやアップデートがなく、静かでCPUとメモリ効率がよく安定して長時間使えるOSは制作にとても向いていると思います。

参考資料

エンジニアインタビュー動画


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