正しく見るためにはバイアスが要る
日本人は茶色いのに紅葉なんて言ったりする。
それは、青信号が実際には緑色なのと一緒の事だろう、と思っていたから、紅葉って本当に紅色や黄色なんだよ、と教えて貰った時は、とてもショックだった。
多分、二十歳くらいだったかな。
桜の色がグレーじゃないという事を知ったのよりも、一年くらい後だったと思う。
けれども、桜が桜色だった事よりも、紅葉が紅色というのは、事件性が強かった。
日本のわびさびって、自分が思っていたよりも、全然、カラフルなんか、と悟ったから。
そして、昨晩、ふと思って、まじまじと見てしまったのだけど、紅茶も、もしかして紅色をしているんじゃないだろうか。
緑茶が実は茶色じゃない様に。
桜をピンクに、紅葉をアカに見る。
そういうバイアスは、もうすっかり持ち合わせているのだけれども、紅茶を何色に見たら良いのかは、考えたこともなかったから、不惑にして、すっかり判らなくなってしまった。
やっぱり、茶色じゃないのかも、紅茶って。
色なんてものは、こちらが見ようと思った色に、いくらでも補正して見えてしまうものだから、意識的に染めてやらないといけない所がある。
バイアスを掛けなかったら、桜は灰色、紅葉は茶色、黒と青を混ぜて出来上がるのが紫色、という具合に、僕には世の中が見えていた。
けれども、常識を持ったから、今では、そんな見誤りは滅多に起きない。
無意識にバイアスが正しく働くまでになっている。
しかし、それは、何も色に限った話ではないかも知れない。
正しいバイアスを持つのは、そんなに難しい事じゃない。
ただ、知って、決めれば良いだけの事だから。
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