見出し画像

優秀な職人が起業しても、プラント業界では生き残れない2つの落とし穴。

今回は「プラント業界を去っていった経営者たち」をテーマにお伝えしていきます。今からお伝えする内容も、プラント業界の闇の1つ。

起業した優秀な職人が、どうしてプラント業界を辞めてしまうのか。そこには2つの落とし穴がありました……。

独立を目指す職人たち

柳井工業のnoteでは、口酸っぱく「プラント業界は人手が足りない」とお伝えしてきました。

回転機の定修工事やメンテナンスをする際、約100人の職人を募る必要がありますが、人員が足りないため、協力会社の助けが必要です。(ほとんどの会社は、正社員の職人は5人前後)

下請け

そのため「100人の職人を自社で雇っている」というケースは、ほぼありえません。大企業でも同様です。

自社でまかないきれない原因はさまざま。大きな要因の1つは「独立を目指す職人」からです。

しかし、これがまあ……闇が深いです。職人が独立を目指すきっかけとして、

・技術力が向上した
・独立して自分で仕事を獲得すれば収入が上がる
・なおかつ現場も時期も自分で選べる

があります。「会社員よりも独立した方が稼げるよね。しかも、現場も仕事時期も自分で選べて最高……!技術はほぼマスターしたし独立してもいけそうだな〜」という感じでしょうか。

でも現実は、そんな簡単ではありません。プラント業界は闇が深く、技術力があっても仕事を獲得しづらいのです……。

その結果、プラント業界を去っていった経営者たちを私は何人も見てきました。

起業しても「うまみ」があまりない / 経営者がプラント業界を去る理由①

まず、起業や独立をしても「メリットが少ない」ことに気づかされます。特に起業した場合、

・取引先で機械を壊すと自分の責任になる
・怪我をしても保障してくれない
・協力会社の技術力が低い
・思ったよりも儲けが少ない

こういったケースはあるあるです。1つ1つ、もう少し深掘りしていきます。

●「保障」がなくなり、自分の「責任」が増える

今まで社員として職人をしていた場合、取引先の機械を壊してしまった場合、会社が責任を取ってくれました。また、現場で怪我をした時も会社が保障してくれます。

当然、自分で経営しているとこの恩恵を受けられない。ましてや、社員やメンバーの責任も自分が背負うことになります。

●協力会社の技術力が低い

人員が足りないことがほとんどなので、その際は協力会社にメンバーを募る必要があります。不幸なことに、協力会社の職人レベルが低い場合がよくあるんです。

たとえ協力会社の職人だったとしても、自分が集めたメンバーなので、ミスをされても自分の責任。自社のイメージが悪くなることもしばしばあります。

●思ったよりも儲けが少ない

意外かもしれませんが、案外儲けは少ないんですよ……。通常の場合、1つの工事でもらえる報酬は「1工事●●●万円」。

そこから、「人件費」「交通費」「何かあった時の保障代金」が引かれます。

なので利益を上げるためには、「少ない人数で工事をする体制」が肝。しかし現実はなかなか難しく、技術力低いなかで、人数を抑えるのはほぼ不可能なのです。

「あれ。会社員の時よりちょっと収入は上がったけど、その代わりに責任ばかり負わされてるな……」ということに気づくのです。

独立した職人を起用しない裏側がある / 経営者がプラント業界を去る理由②

経営者がプラント業界から去る理由には、まだ”つづき”が。「自分が起用されない」といったことが、しばしば起こります。これはなかなか闇が深いです……。

例えば、田中さんがA社を退職したとします。すると、A社がクライアントに対して「田中が弊社を退職したので、仮に一緒に仕事をしたいというお願いがあっても、起用しないでくださいね」といった話が広がってしまうんです。

IT企業の場合、会社を退社しても引き続き案件をもらえるという話は、よくありますよね。会社員時代に”Webメディアの運営”を担当していて、フリーランスになっても”ディレクター”の仕事を引き続き担当する、といったように。

プラント業界ではほぼ、不可能なのです。これには大きな理由があります。

・「技術力が奪われる」と懸念している
・「裏切られた奴」とムカっとしている

プラント業界は特殊です。体制が古く、村社会。「退職=裏切り者」と認識する方も多く、逃げた人に仕事を与えないようにしているのです。

たしかに、職人は技術職。「技術を盗まれた」と思うのもわからなくないですが、ゆるく繋がり、「何かあったらお願いしよう」というスタンスでいいと思います。わざわざ縛らなくても……。

柳井工業が力になれるのは、やっぱり「ギルド制」

柳井工業でできることを考えてみました。プラント業界の体制をすぐに変えれるわけではありませんが、以前noteでお伝えした「ギルド制」が有効なのではないかなと。(詳細は以下の記事をご覧ください)

ギルド

1. 仕事内容・現場・単価を掲示板に載せる
2.そのクエストの条件がマッチしている人が応募する

最初にお伝えしたように、起業や独立を目指す職人は多くいます。優秀な職人と柳井工業がタッグを組み、近い将来「ギルド」を組みたいです。

柳井工業との関わり方は、社員でもフリーランスでも、形態は問いません。

そうすれば優秀な職人を手放さず、プラント業界をより良くできると信じています。

行く行くは、100人を束ねられたらなと。

そのためにも、まずは「プラント業界・柳井工業の発信」「自社の技術の底上げ」に力を注ぎ、「柳井工業さんと一緒に仕事がしたいです」と言ってもらえるような会社になりたいですね。

・・・

今回は「プラント業界を去っていった経営者たち」をテーマにお伝えしてきました。どうか、優秀な職人は辞めないでほしいです。

もっとなめらかな業界になれるよう、柳井工業が何かお手伝いできればと思っています。


取材・文/ヌイ(@nui_nounai

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?