株式会社の機関と株主総会

 会社法に則り、上場と会社の機関設計について述べていきたい。
 今回は、機関の超簡単なイメージと株主総会をメインに述べる。

 株主総会は、ちょうど私も主担当者として色々駆けずり回ったので、実体験も交えていければと思う。

株式会社の機関

 株式会社にも株主総会・取締役会・監査役などの機関が存在する。
株式会社の実際の運営は、この機関であるところの合議体や自然人が行うわけだ。
 なお、機関設計については、それまでの会社規模による画一的な規制がなくなり、会社法では定款自治によるより自由な設計が可能となった。

監査役設置会社とは、、、、、
 監査役を置く株式会社または会社法により監査役を置かなければならない株式会社。ただし、会計監査限定の場合は監査役がいても監査役設定会社とはいわない。

監査役会設置会社とは、、、、、
 監査役会を置く株式会社または会社法により監査役会を置かなければならない株式会社。

監査等委員会設置会社とは、、、、、
 監査等委員会を置く株式会社。2014年の会社法改正で導入された新しい機関設計。実質的には監査役に取締役会における議決権を与えたもの。

指名委員会等設置会社とは、、、、、
 指名委員会、監査委員会、報酬委員会を置く株式会社。

機関の種類:今回は株主総会

 株主を構成員とする株式会社の最高意思決定機関である。株式会社には必ず株主総会を設置する必要がある。

①権限

 法定に規定する事項または事項で定めた事項に限り決議することができる。業務執行は原則として取締役会の決定に委ねられるからである。
 ただし、非取締役会設置会社においては、一切の事項につき決議できる。

②時期

 定時株主総会は、事業年度ごとに開催が必要である。通常は年に1回、あっていの時期に定時株主総会を招集しなければならないことになる。
 実務上は、定款で事業年度末日を基準日として議決権を付与している。この議決権は基準日から3ヶ月以内に行使する必要があるので、結果的に事業年度末日から3ヶ月以内に開催されている。
 臨時株主総会は、必要に応じていつでも招集できる。定款に基準日の規定がないので、上場準備会社では基準日を設定し、その2週間前までに広告をすることによって株主に名義書簡を促すことが多い。

③計算書類等との関係

 定時株主総会には、計算書類および事業報告が提出・提供される。計算書類は承認を受け、事業報告の内容は報告される。
 会計監査人設置会社については、取締役会の承認を受けた計算書類が法令および定款に従い株式会社の財産および損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合には、当該計算書類の内容を報告することで足りる。
 また、大会社かつ有価証券報告書提出会社で連結子会社がある場合は連結計算書類の作成が必要になる。連結計算書類も定時株主総会に提出・提供する必要がある。そして連結計算書類の内容と監査の結果が報告される。

④出席権

 株主は、株式1株または1単元につき1個の議決権を有する。
 議決権を有する株主にのみ株主総会への出席権が認められる。原則として株主総会当日に議決権を有する株主に出席権がある。しかし、実務上は、事前に招集手続を準備する必要があることから、定款によって事業年度末日の最終の株主名簿に記載または記録された株主に議決権そして出席権を与えている。

⑤事前の議決権行使

 事前の議決権行使が可能となる方策が採られる。企業側にとっても定足数を確保する目的もある。
 1つは、書面による議決権行使を認める議決権行使書方式である。もう1つは、株主に対し委任状の提出を勧誘する委任状方式である。
 議決権行使書方式の発展形態が電子行使方式である。
 議決権を有する株主数が1,000人以上の場合、議決権行使書方式が強制される。
 議決権行使書方式か委任状方式かを問わず、議決権の不統一行使が認められる。実務上は、信託銀行、外国人機関投資家の常任代理人が利用している。

⑥招集通知

 株主総会の2週間前までに招集通知を発送しなければならない。「2週間前までに」という期間の計算は、初日不算入で行うので、発送日と総会日の間に中2週間が必要ということになる。
※事務関連でこういいた○日前のような計算が必要なケースが多いが、基準となる日付などが分からなくなるので要注意というのが私の経験だ。
 株主全員の同意があれば取締役会決議や招集通知の発送などの招集手続を経ないで株主総会を開くことができる。
 ただし、議決権行使書方式・電子行使方式を採用する場合は省略できない。

⑦議事

 議長が議事を進める。一般的には、定款で「株主総会は、取締役会社長がこれを招集し、議長となる。」などと定められる。議長には、株主総会の秩序維持権、議事整理権、退場命令権という強い権限が与えられている。
 株主は、議決権行使の参考とするため、目的事項に関して質問ができる。これに対して、取締役や監査役は説明する義務がある。

⑧株主提案等

 取締役会設置会社では、総株主の議決権の100分の1以上もしくは300議決権以上を所有している株主は、総会日の8週間前までに株主提案ができる。
 また、株主総会に出席した株主は誰でも、総会の目的事項に関して議案が提出できる。いわゆる、議案修正動議である。

⑨決議

 株主総会の主な決議方法には、普通決議、特別決議および特殊決議がある。
 普通決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の賛成をもって決議する。実務上は、定款に別段の定めを置いて定足数を排除する。
 ただし、役員選任議案の場合には「議決権行使できる株主の議決権の3分の1以上」までしか定足数を緩和できない。
 特別決議は、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって決議する。3分の1まで定足数を緩和できる。
 特殊決議は、議決権を行使できる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上の賛成をもって決議する。
 決議方法は決議内容によって異なる。剰余金の処分などは普通決議になる。

⑩株主総会後の手続

 総会後の会社法上の手続は下記がある。
ア 配当金の支払
イ 決算公告(有価証券報告書提出会社は免除)
ウ 株主総会議事録の作成、備置
エ 議決権行使書、委任状の備置(総会の日から3ヶ月間)
オ 変更登記

⑪株主総会の省略

ア 株主総会の書面決議
イ 株主総会への報告の省略
※どちらも全株主の同意が必要

最後に

ここまで株主総会について述べたが、実際に主担当者として動いてみて、企業サイドの業務負荷は大きいと感じた。
計算書類等を含む広義の招集通知作成から発送、株主総会会場の抑え、お土産の用意や当日の仕切りが必要だ。
また、関係する支援会社と書面のやり取りなども適宜行う。

これらの業務は普段の四半期、月次、日常業務にプラスされるのだ。

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