上場の意義、メリット・デメリットとは?

これまでnoteにて投稿してきた記事は、ERP周りの内容が中心であったが、ここから暫くの間、本来得意とするIPO周辺の話題について記載していきたい。

実際に東証一部上場企業で働くなかでの体験や経験も交えて書いていきたいので、お楽しみに。

「株式上場」および「上場準備」、「コーポレート・ガバナンス」といった領域は非常に幅広く、今回のIPOに関するシリーズは非常に長編となる可能性が高いので、「いいね!」やコメントなど応援いただけると幸いである。

記載の視点としては、やや上場企業経営者および担当者目線で書いていることをご了承いただきたい。

上場の定義

「上場」や「IPO」はよく聞くが、そもそもの定義を述べる。

上場とは「会社の発行する有価証券を、証券取引所の開設する証券市場において売買の対象とすること」をいう。会社目線で書くと、「自社が発行する有価証券を、証券取引所の開設する証券市場において売買される資格を取得すること」である。

「資格を取得する」ための過程がいわゆる「上場準備」といわれる。ここについては、後日投稿する記事でしっかり解説していきたい。

「上場」ときくと、株式が第一に思い浮かぶだろうが、対象は有価証券であるため、株式だけではない。

次に、「株式公開」あるいは「公開会社」という言葉がある。

厳密には「株式公開」≠「株式上場」であり、「公開会社」≠「上場会社」である。未上場会社でも有価証券報告書を提出するケースもある。(ここでの「公開会社」は会社法上の「公開会社」とは別の概念である。)

「IPO」とは、「Initial」とつくように、簡単に言うと最初の上場時に使われる言葉である。

上場のメリット・デメリットについて

後ほど上場の意義について述べたいが、先にメリット・デメリットについて説明する。

⑴メリット

よく言われるものが大きく下記の5点である。

①資金調達の多様化と財務内容の強化

企業活動において資金は必要不可欠であるが、家族や知人などからの資金調達には限界がある。また、銀行などの金融機関からの間接金融にも限界がある。間接金融に頼るということは、借入金(負債)が増え、財務体質の悪化を招く。上場により直接金融による資金調達が可能となる。財務体質の強化や経営基盤の確立が可能となる。

②会社の知名度の向上

これは分かり易いのではないだろうか。たとえば、見ず知らずの会社ではない当店で、会社の営業政策面で有利に働く。与信が受けやすくなる、という効果もある。また、優秀な人材の確保にも繋がってくる。(人材採用という点だけでもかなり面白いテーマなのでいつか書いてみたい。)
当社においても、私が4月で3年目になるのだが、19卒、20卒と新入社員は有名大学卒であったり大学でもしっかり学ばれている方が多くて、驚愕している。(大学時代、私は全く勉強していなかった。笑)

③会社の管理体制の充実

まず上場準備の段階で、上場審査に対応するため内部管理体制の整備に取組まなければならないし、上場後も迅速かつ正確な会社情報の開示や上場会社としてのコーポレート・ガバナンスへの対応など、会社の管理体制はいやでも充実せざるを得ない。
この体制基盤確立、強化がIPOのメリットと語る方々も多い印象である。
現在、私は継続開示や適時開示に業務上関与している。

④創業者利潤の実現と資産価値の明確化

株式上場により所有株式の売却が可能となるので、創業者利潤が発生する。
「Exit」というワードはこのタイミングに関連するものだ。

⑤流動性の向上

上場により株式の流動性が増す。

⑵デメリット

こちらも大きく5点あるかと思う。

①株主総会への対策を含め株式関係の事務量等が増大する

大雑把に言うと株主への対応コストである。
私も株主総会の開催準備や運営事務を主担当として経験できたが、書類対応やお土産準備、会場の抑えなどなんでもやった。日常の主業務との兼務であったが、業務量だけでかなりのものだ。当然お金もかかる。

②ディスクロージャーへの対応

上場会社は会社法に加えて金融商品取引法適用会社となる。そのため、開示等が種々義務付けられる。会社の決算状況だけではなく、重要な情報を正確かつ迅速に開示しなければならない。

③買占めへの対応

上場会社はM&Aなど買占めの可能性に晒される。なぜなら、不特定多数の株主が自由に株式を取得できるからだ。

④コンプライアンスへの対応

上場会社は「社会の公器」として、その責任として各種法律の遵守が強く要求される。また多くの株主や投資家の監視下にあり、動向は注目される。
個人的に「社会の公器」という言葉が好きで、従業員として働くことに誇りも覚えている次第だ。日本をリードしているという高い意識と志が大切と理解している。

⑤事務量及び経費の増大

①と重複するが、上場会社として取り組まなければならない事項が大幅に増加する。それに伴う諸費用が大幅に増加する。

上場の意義

逆説的な書き方になるが、先に述べた上場会社としてのメリットが発生するのは、上場企業に対する社会的信用が大幅に増加するから、に他ならない。

つまり、社会的信用力が上場のメリットに発生要件である、ということだ。

300万社あるといわれる株式会社において、証券取引所に上場している会社は約4,000社に過ぎない。

上場会社は法律をはじめ要求される社会的責任が大きい。

具体的には、株主への利益還元、正確かつ迅速な情報開示、コーポレート・ガバナンスの構築、コンプライアンス対応、企業の独立性の確保、地域社会への貢献、等である。

上記は、先程書いたデメリットの裏返しである。

また、上場会社の信用力を測る物差しが「株価」である。ある意味、収益性や安定性、将来性など様々な要因を反映した「評価」ともいえる。

具体的な株価算定などクリティカルな話は、また別の機会に述べられればと思う。

株式非上場化の流れ

「株式非上場化」なるケースは複数ある。上場廃止といえば、証券取引所との上場契約違反、法人格の消滅、完全子会社化、会社の倒産などがある。
一方、自主的に株式上場廃止に踏み切るケースもある。

①外部株主の顔色を気にせず、長期的な視野で経営できる
②ディスクロージャー負担の軽減
③各種監査も簡素化できる
といった辺りの理由だ。

今後、日本からユニコーン企業が出現し、世界をリードするためには、小さくマザーズ上場で一息つくのではなく、非公開会社のままでいることも必要かと思っている。

一方で、上場できる企業の見極めというか事業領域については、実際に起業していないので素人意見だが、デカすぎず小さすぎない業界、レガシー産業をITで革新できる、サブスクリプション型の収益構造があるか、などがポイントかとにらんでいる。

私も近いうちにそういったユニコーン企業の創業にコミットしていきたいという野心がある。
もちろん、今ある経験やスキルを活かして、上場準備支援や経営管理領域でご協力できることがあればご連絡いただきたい。

ぜひそういった方々ともつながっていきたいので、facebookやtwitterなどご連絡お待ちしています。

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