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「名言との対話」9月27日。谷川徹三「私は生涯一書生をもって自らを律して来た者だ」

谷川 徹三(たにかわ てつぞう、1895年〈明治28年〉5月26日 - 1989年〈平成元年〉9月27日)は、日本の哲学者。詩人の谷川俊太郎は長男。

京都帝国大学哲学科へ入学して西田幾多郎に師事する。後に1963年に法政大学総長に選出され、1965年まで務めた。宮沢賢治の研究家でもあり、掘り起こして世に出した一人だ。柳宗悦とも交流があり、終生民藝運動を支えた。象徴天皇制を擁護した論客。『世界』の創立メンバーの一人。1987年、文化功労者。 1989年、94歳で亡くなる直前まで、仕事をしていたという。 谷川俊太郎が糸井重里との対談の中で、「ウチの父親って、哲学をいちおうやったんだけど、ほんとに普通の言葉で書ける人だったの」と語っている。

『谷川徹三対談集 九十にして惑う』を読んだ。90歳前後の生活が垣間見える。伊沢修二の指導でどもりの矯正で腹式呼吸を身に着けた。ベートーベン「弦楽四重奏曲」。読書と執筆。体操1時間、室内自転車最低300回。青竹踏み300回。首まわし、手の指の開閉運動300回。ラジオでいろんな人が人生を語るのを聞くのが楽しみ。、、、

終生の座右の書は『論語』『ファウスト』、『正法眼蔵』である。この哲学者は 人物の目利きという感じがする。俳句は芭蕉。文学はゲーテ、音楽はベートーベン。茶碗に限れば唐九郎と半泥子。、、、、。以下、この本で語られている偉人の名言を並べる。

ゲーテ「私は人間である。人間にかかわる、いかなることも私に無縁ではない」「努力する者は過ちを犯す、しかし努力するものは救われる」

孔子「倦むことなかれ」

道元「修証一如」。修行と悟りは一つのこと。悟りを開いても、なお修行を重ねる。

トインビー「生きがいのある生き方。愛すること、知恵を磨くこと。創造的な仕事をすること」

シュヴァイツアー「本能的に円熟の人になるまいと心掛けてきた」

谷川は、幸福とは自己充実感、自己充実が感じられる生き方、それが幸福だと語っている。宗教的心情の中にあるとき、一番自己充実を覚える。宗教的心情とは宇宙的なものの意味である。

「根本史料をやった本はおもしろい」という谷川徹三の学識、読書量、そしてそれぞれの人物から得た教訓を対談の流れに沿って自由自在に披露する。そして自身の警句も多い、たとえば、「心がけ次第だが、運不運ということもある。だから、人間を軽視しちゃいけないし、世の中を見くびっちゃあいけない」。「なにか壁に突き当たった人間というものが結局ものを考える」。「茶会は適材適所」。、、その中でも私は、91歳で書いたこの本の「あとがき」の最初にある「私は生涯一書生をもって自らを律して来た者だ」という自己規定が好きだ。

息子の俊太郎が確か「親父は自分自身にに夢中だったのではないかな」という意味のことを語っていたが、この本を読む中で自己充実に倦むことのない人物像が浮かんでくる。座右に置いたゲーテも、孔子も、道元も、倦むことなく一書生を貫いたとみていたのだろう。「90歳にして惑う」という生き方に大いなる共感を覚える。

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