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「名言との対話」3月4日。天地茂「つまらん奴の手にかかるより、貴公に斬られたかった」

天知 茂(あまち しげる、1931年3月4日 - 1985年7月27日)は、日本の俳優・歌手。

高校卒業後、松竹京都を経て新東宝にスターレット1期生として入社。「東海道四谷怪談」、「黄線地帯」など数多くの作品に出演した。
新東宝倒産後は大映、東映の映画に出演しながらテレビでも活躍の場を広げる。特に1963年のドラマ「孤独の賭け」の千種役で大きな人気を得る。その後、「一匹狼-ローンウルフ」、「夜の主役」、「大岡越前」、「江戸の牙」など現代劇、時代劇を問わず幅広く活躍。中・後期の代表作は「非情のライセンス」の会田刑事と「江戸川乱歩シリーズ」の明智小五郎。天知茂は断片的に映画やテレビでみていたが、苦み走った個性的で存在感のある俳優だったという印象がある。

天知茂を評す言葉は、ダンディー、キザなセリフが似合う、個性派、ハードボイルド俳優、クール。ニヒル、、、。ニヒルな役柄の代名詞的存在として、孤独なヒーロー役や悪役を演じることが多かった。その実力は三島由紀夫が戯曲『黒蜥蜴』(江戸川乱歩原作)の上演にあたって次のように最大級の賛辞を送っている。「もう一人の問題は、(美輪明宏の)相手役の明智小五郎だつた。このダンディ、この理智の人、この永遠の恋人を演ずるには、風貌、年恰好、技術で、とてもチンピラ人気役者では追ひつかない。種々勘考の末、天知茂君を得たのは大きな喜びである。映画『四谷怪談』の、近代味を漂はせたみごとな伊右衛門で、夙に私は君のファンになつてゐたのであつた」。テレビでも明智小五郎役は好評で、天知の当り役となった。

テレビ時代劇においても、映画界時代以来培ってきた安定感のある演技力で主演および主要脇役として活躍した。『非情のライセンス』では主題歌「昭和ブルース」を持ち前の渋い低音で歌ってヒットさせている。

天知茂は映画「座頭市物語」(1961年)の平手造酒役で頭角をあらわした。ふとしたことから親しくなった座頭市(勝新太郎)と平手造酒(天知茂)。二人は相対する親分に草鞋を脱いでおり、二人は対決することになる。一瞬の斬りあいの後平手が倒れ、「見事だ、、、つまらん奴の手にかかるより、貴公に斬られたかった」というこのセリフを口にする。座頭市は亡骸を抱き、涙する。名シーンだ。甲子園の高校野球でも、優勝チームに1、2回戦で惜敗した高校がエールをおくる姿をみかけるが、優れたライバルとの闘いこそ男冥利に尽きるということだろうか。

脇役、悪役、主要脇役、準主演、主役と進み、1985年夏、これから役柄を広げようとしている矢先に急逝した。三島や渋澤龍彦らに高い評価を受け、今から大輪の花が咲くか、という54歳だったのは惜しまれる。

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