「名言との対話」5月27日。レイチェル・カーソン「自然界の保全について、われわれが慎重を欠いていた事実を未来の世代は決して許さぬであろう」

レイチェル・ルイーズ・カーソン(Rachel Louise Carson、1907年5月27日 - 1964年4月14日)は、1960年代環境問題を告発した女性生物学者

アメリペンシルベニア州生まれ。10歳で書いた小説がコンクールで受賞し、作家になろうと決心し、大学で英文学を学ぶ。その後生物学に興味を持ち、大学院では遺伝子を研究し、科学者を志す。連邦漁業局につとめながら科学ライターとして雑誌に記事を書く。漁業がもたらす害を研究する中から、農薬として使う化学物質の害に心を痛めるようになる。

執筆中にガン宣告を受けて病と戦いながら『沈黙の春』を1962年に刊行し、ベストセラーとなる。関連業界からの妨害と攻撃にさらされたが、当時のケネディ大統領が関心を持ち、DDTなど化学物質の使用制限にいたる政策に反映されるなど大きな影響を与えた。命をかけた執筆であった。1964年に死去する。遺作となった『センス・オブ・ワンダー』はアメリカで2008年に映画化された。没後の1980年にはジミー・カーター大統領から大統領自由勲章を授与されている。

今回『沈黙の春』を読んでみた。資料やデータ提供者、原稿をみてもらいアドバイスをもらった人、公害反対の活動家、文献収集に力を貸してくれた図書館の専門家などの助力で、この本が出来あがっていることがわかった。

地球誕生以来、そして生命の誕生以来、生物と生物をとりまく環境は絶妙の均衡をつくってきた。そして生物同士も複雑な網の目のような関係があり、その均衡は寸分の狂いもないという状態を保ってきた。生物の7、8割の種類がある昆虫は農産物に害があるとして殺虫スプレーで絶滅させようとすると、生命力の強い種だけが生き残る。人間はさらに強い抗力の薬品を使う。環境が破壊され、絶妙の均衡が破れていく。そしてその連鎖は人間自身の遺伝子に悪い影響及ぼしていく。化学薬品は放射能におとらず人間の遺伝子に負荷を与える。昆虫退治の武器は、その武器を発明した人間自身と地球環境を滅ぼしていくという警告の書である。アメリカだけでなく、日本を含む世界に衝撃を与えた書である。環境問題を指摘し環境保護運動が活発になり、アースデーや国連環境会議の発足につながっていった。計り知れないほど影響力の大きな仕事であった。

レイチェルカーソンの主張と56年の短い生涯に関心を持つ人が多く、伝記が多く出版されている。主な伝記だけでも7冊あり、若い人向けの啓蒙的伝記も5冊ある。日本での翻訳出版も多い。

・地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学的であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。

・世界中の子供に、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダ」を授けて欲しい。

・今、私たちは岐路に立たされている。私たちはずっと高速道路を走ってきた。快適でスピード感に酔うこともできた。しかし、行き着く先は破滅。もう一つの道は、人はあまり行かないが、この道を行く時にこそ、自分たちが住んでいるこの地球の安全と生命を守ることができるのだ。

「春が来ても、鳥たちは姿を消し、鳴き声も聞こえない。春だというのに自然は沈黙している」。そういう春が訪れるのではないかという警告。それが「沈黙の春」である。レイチェル・カーソンは、人類の進む方向を変えた価値ある、歴史的な書を残した。今を生きている世代には、未来の世代への責任がある。


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