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「名言との対話」8月15日。笹本恒子「人生は不思議なもので、開くドアを一つ違えるだけで、その先がまるで変わってしまいます。」

笹本 恒子(ささもと つねこ、1914年9月1日 - 2022年8月15日)は、日本写真家。享年107。

東京都出身。「女性報道写真家第一号」として著名である。また肖像写真家としてもすぐれた作品を遺している。

2014年に日本新聞博物館(ニュースパーク)で開催中の「日本初の女性報道写真家・笹本恒子100歳展」を観た。
1929年竣工の旧横浜商工奨励館を保全・活用した横浜情報文化センターの中核施設がこの博物館である。由緒ある、そして雰囲気のある建物だ。関内にはこういう文化施設があちこちにある。1階の広い空間には新聞を刷る巨大な輪転機が鎮座している。2階から5階が日本新聞博物館。

笹本恒子は1914年生れで2014年に100歳を迎えた。カメラを手にして75年で、撮影や執筆に忙しい日々を送っている。1940年に26歳で写真協会に入り報道写真家となって、日独伊三国同盟の婦人祝賀会、ヒトラーユーゲント来日、日米学生会議の記録、そして日米開戦前夜の貴重な写真を撮影した。

1941年に結婚するが、戦後に離婚。フリーとなって、初代南極観測船宗谷原爆ドーム、三井三池争議、安保闘争などの事件や、徳富蘇峰岡本太郎大宅壮一などの著名人を取材する。
20年の沈黙を破り、1985年から71歳で再びカメラを手にし、宇野千代三岸節子など明治生まれの女性シーリーズを手がける。この展覧会では、女性シリーズが素敵だった。壺井栄、加藤シズエ、澤田美喜中村汀女石垣綾子杉村春子佐多稲子丸木俊吉行あぐり淡谷のり子沢村貞子斎藤史美空ひばり笠置シズ子越路吹雪、、、。
男性では、市川猿之助千宗室白井義男野村胡堂三笠宮三木武吉藤山一郎山田耕筰力道山、三船久蔵、升田幸三井伏鱒二大仏次郎長谷川伸尾崎士郎室生犀星新藤兼人、、、。この人の写真では、やはり人物写真がいい。

2011年に吉川英治文化賞を受賞、。2018年、東京都名誉都民。

2014年の「笹本恒子100歳展」をみてから10年経った。笹本は2022年に107歳という年齢で永眠していることに驚いた。偉大なセンテナリアンであった。

『自伝 笹本恒子の97年--お待ちになって、元帥閣下』を読んでみた。
「人生は不思議なもので、開くドアを一つ違えるだけで、その先がまるで変わってしまいます。」という「96歳の転機」のなかの言葉にうなずいた。学校の選択、就職の選択、配偶者の選択、、、人生は選択の連続だ。ドアが一つ違うだけで、その先に違った風景が広がっている。笹本恒子の場合は、107年という長い時間を過ごしたから、さまざまな「もう一つの人生」があっただろう。


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