「名言との対話」 4月8日。周富徳「ごく簡単でみんなが馬鹿にするような料理が一番難しいんですよ。特にチャーハン」

周 富徳(しゅう とみとく、1943年3月11日 - 2014年4月8日)は、広東料理の料理人。

横浜中華街出身18歳で料理の道に入る。新橋「中華飯店」で修行を積み、京王プラザホテル「南園」を経て、「聘珍樓」、「赤坂璃宮」で総料理長を歴任。1993年、「広東名菜富徳」青山店のオーナーとして独立する。料理番組を中心にテレビ出演も多く、「炎の料理人」、「広東料理の現人神」と呼ばれ、人気があった。

「料理番組のバラエティー化があって、ぼくは本来料理人だけど楽しんでやっている。今の社会が“おいしい”だけではなく、楽しみを求めてるんですよ」「現代のストレス社会のなかで、仕事仕事って、枠にはまって仕事ばっかりやってちゃだめなんだ。もっと楽しまなきゃ。自分も楽しんで見ている人も楽しいって喜んでくれる」。

「千種類の中華料理の味は覚えている。味と食べた記憶の見た目は覚えている。そうすると、自ずから『この味とこの色を出すには、これとこれが要る』ってことが分かる。その後は、中華料理のルールに従って、『この食材とこの食材は、こちらを先に入れる』とか、『これにこういう味をつけるには、この下ごしらえをする』って分かる」と料理の秘訣を語る。

YouTubeで『料理の鉄人』(フジテレビ系)の最高レベルの決戦を2本見た。最初は周富徳の弟が鉄人・道場六三郎に敗れた敵討ちの番組だ。料理のテーマは「カニ」。カニは3本目の足が一番うまいことを初めて知った。3人の判定人は「うなりました」「満点」「納得」などそれぞれ両方とも最高級の褒め方だった。結果は無敗の道場六三郎が勝利する。

2019年に高校の同級生たちと銀座の道場六三郎の店「懐食みちば」で会食したことがある。孫娘が支配人をしていた。道場は日本の和食料理人で1993年より始まった人気番組『料理の鉄人』に初代「和の鉄人」としてレギュラー出演し、27勝3敗1引き分けの好成績を収めたことで料理人ブームの先駆けとなった。「食材に国境なし」と明言しており、和食料理人でありながらキャビアやフォアグラなどの西洋料理食材、皮蛋などの中華料理食材なども積極的に取り入れるなど、型にとらわれない自由な発想の料理が特徴だ。

もう一つの映像は、周富徳の再挑戦の番組だ。負けたら「弟とともに助手になる」という決意を披露している。相手はやはり道場六三郎。テーマは「豚」。周は家庭料理をつくった。判定人の一人は前回と同じ北王子魯山人の愛弟子・平野雅章。この人は料理史家で、労作『食物ことわざ事典』を読んだことがあり、私のこの「名言との対話」にも登場した人である。チャーハン狂いを自称する平野は、周の「ザーサイとひき肉のチャーハン」を「とどめをさす」と表現した。日本料理の道場は不得意のように見えたが素晴らしい料理をつくった。結果は無敗の道場を破り、周富徳の勝ちとなり、対戦成績は1勝1敗となった。

再度負けたら、相手の助手になるという決意に感心したが、「ごく簡単でみんなが馬鹿にするような料理が一番難しいんですよ。特にチャーハン」というように、得意技で勝負したのだ。

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