「名言との対話」8月25日。小山やす子「どうしてもやらなければならない一生の仕事がある」
小山やす子(1924年8月25日ー2019年2月27日)は、かな書を専門とする書家。
東京生まれ。書家として川口芝香に師事し、2002年毎日書道展で文部科学大臣賞、2003年に六局屏風「伊勢物語」で毎日芸術院賞、2008年には「更科日記抄」で芸術院恩賜賞を受賞。毎日書道会理事、日展評議員を務めつつ、2016年に文化功労章を受章。
「墨コレクション 書を愛する人へ 珠玉のメッセージ集」(芸術新聞社)を読んだ。日本を代表する書家たちのメッセージが載っている。漢字、詩文書、墨象、篆刻などの大御所たちだ。「かな」では、高木聖鶴もいる。
小山やす子は凝り性である。千字文、油絵、仏像、やきもの、魯山人、民芸、備前、掛け物、そして書に行き着く。書だけはずっと凝ったまま続けている。続けることが一番とし、精魂を傾ける人だ。
書は独学で学んでいる。博物館に通って古筆の展示をみる。古筆カードを大きな写真として注文し、転折、筆遣いを研究した。使う紙の研究で紙屋にも通う。「作品は料紙で決まる」とし、料紙作家の大柳久栄の紙をよく使う。大柳久栄に今村紫紅の南国の風景を描いた絵巻物を参考にして明るい作品に仕上げてと注文している。大柳久栄は、藍、梅などを用いる草木染の名手だ。砂子や雲母をよけなくても上から気持ちよく書いてもらえるように、書きやすい紙をつくってくれる。
小山やす子の勉強法は、本物を見て、目習いをすることにある。見て覚える、そして字が紙にとけ込むまで研究する。「だらしない人は、やっぱり字が汚いの、人柄が出ますね」「些細なことでも気持ちをおろそかにしない」。真摯に取り組む姿勢がある。
書道はもちろん、骨董、絵画にも造詣が深い。様々な美術品を鑑賞した後、書道に辿り着いたこともあり、関心が広い。そして書を書くための文房四宝(筆、墨、硯、紙)にも強い拘りがある。毎日書道展で「毎日賞」、「準大賞」をもらい、もっと勉強しようと思う。賞をはご褒美ではなく、励ましととらえている。
小山やす子は独学の人だ。芸術の広い分野を渉猟し、賞をもらうと満足するのではなく励ましととらえ、ずんずんと進んでく。その結果、「どうしてもやらなければならない一生の仕事がある」というまでになった。それが書の世界だ。そして独特の境地をひらき、女性初の文化功労者となるという生涯であり、94歳で亡くなるまで現役だった。
書の世界では、「本建築は自力でしなければならぬ」という気力あふれる熊谷恒子の記念館、「異国趣味の清算は時代の意欲である」と主張する 金子鷗亭の記念室を訪ねたことがある。「平安の古筆の域に達するにはあと100年必要だな。200歳まで一生懸命練習しないと、平安時代の古筆には迫れない」という高木聖鶴についてもこの「名言との対話」で書いている。また、書を愛する人では、相田みつを、小渕恵三、平櫛田中、小泉清子、武者小路実篤、北王子魯山人、三木武夫、田中塊堂、矢口高雄、高村光太郎などが思い浮かぶ。「書の世界」も深い。
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