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映画レビュー: 『Scream, Queen! My Nightmare On Elm Street』

映画好きな人で『エルム街の悪夢』を知らない人はほぼいないと思いますが、意外としっかりとシリーズを見たことがある人は少ない気がします。私は定期的にホラー好きな友人と2人でホラーナイトというイベントを開催して、ひとつのシリーズをすべて一気見するというなかなかハードコアな企画をやっているのですが(『ハロウィン』シリーズの夜は非常に辛かった・・・)、その第一弾に選んだのが『エルム街の悪夢』シリーズでした。

意外と見逃しているものだったり、覚えていないものがある中で、完全に「見たことない」レベルだったのがパート2にあたる『エルム街の悪夢2 フレディの復讐』でした。

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で、この作品、ある意味ホラー映画界での超異色作品なんです。何が異色かというと、まず主人公が男性という点。そして、当時は制作側は意識してないことを主張していますが、どこからどうみてもゲイ映画なんです(笑)。どんなところが?と言うと、簡単に見ても、

- 主人公ジェシーと友人ロンの絶妙かつ微妙な友情関係
- SM趣味の体育教師
- ↑がタオルでお尻を叩かれるSMチックな拷問シーン

などなど。これはあくまでわかりやすい表現のみの話であって、これ以外にもジェシーがガールフレンドのリサとの「最中」にフレディに乗っとられそうになるシーンは「彼の中の真のアイデンティティが女性を拒むことを比喩している」などの考察もあったり、まぁ色々な見解が存在するようです。

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ホラー映画はある種特殊なジャンルなので、これだけGender Equalityが重要視される現代においても同性愛者の活躍というのは非常にレアなものです。記憶している限りでも本当に数本しかまともにゲイキャラクターなどが出てくるホラー映画はなかった気がします。これはやはりジャンルに期待するものがもう凝り固まったものであることも要因としてはあると思います。社会的視点や政治的な思想、そういった難しい話が見たい人はそもそもホラー映画なんて見ないと思いますし、私自身そういった考えさせられる映画ももちろん好きですが、頭の悪そうなティーンエイジャーたちがナイフを持った殺人鬼に理不尽に追い回されるようなおバカなストーリーが見たいからホラー映画が好きなのです(笑)。

さて、そんな中主人公を男性にし、同性愛に厳しい80年代のハリウッドにおいてホモセクシュアルな要素をぷんぷん漂わせたこの作品は当然当時は批判の嵐だったそうです。ですが、時代が進み改めてこの映画を評価する声が高まってきているようで、今回レビューに選んだ『Scream, Queen! My Nightmare On Elm Street』というドキュメンタリー映画も制作されることとなりました。

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この映画は『エルム街の悪夢2 フレディの復讐』にて主人公ジェシー役を演じたマーク・パットンにスポットライトを当てたドキュメンタリーとなっています。若手スターとして、将来の成功の"鍵"となる「ヒットホラー作の続編の主役」の座を見事に掴んだものの、酷評や批判の嵐を受け、その役者人生を諦めるに至った彼がその後の人生やエルム街に出たことでどういった道を歩まざるを余儀なくされたか。

たった一本の映画。それがこれほどまでに人の人生を左右するものなのだと興味深く見れると同時に、ハリウッド、そしてホラーというジャンルにおける同性愛に対する歴史についても触れられます。単純に1人の役者の人生に焦点を当てただけではなく、過去との決別や「前を向いて歩く」ことの大切さなども感じ取れるような作品でした。ドキュメンタリーとして一級品かというと難しいところもありますが、あっという間に見終われる、そして見た後もう一度『エルム街の悪夢2』を見たくなってしまう作品でした(笑)。

日本公開は難しいかもしれませんが、いつかひょっこりとNetflixなんかに登場したりするのではないかなどと期待しております。

最後に、ジェシーの彼女役を演じたキム・マイヤーズさん。

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当時からメリル・ストリープにそっくりだなと思っていましたが、今でもとってもそっくりでした(笑)。

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