情報リテラシーと人間


 話し聞く力を英語で言うと「オラシー(oracy)」。「口の」という意味の「オーラル(oral)」に由来する。
 文字(letter)を使って読み書く力は「リテラシー(literacy)」。「文字の」という意味の「リテラル(literal)」に由来する。
 「情報リテラシー」という場合の「リテラシー」は、文字に限定されない多様な媒体を通して情報を入手・理解・利用・加工・生産・表現・発信する能力を指す。つまり、「情報リテラシー」の「リテラシー」は、「オラシー」を含み、さらに、画像や映像、図や表や地図等々の読み書き能力も含んで、広く、情報にかかわるコミュニケーション能力全般を指す用語として使われているのである。
 情報リテラシーの中で、大きな役割を担うのが言葉の力である。
 人類は、狩猟・漁労・採集・農耕の生活あるいは戦いで、言葉をはじめとする情報活用力を駆使して生き抜いてきた。そういう意味で人類は、情報活用力としての「情報リテラシー」をそれぞれの時代に応じて使い続けてきたと言える。
 情報は力であると言う。その力は、人類が言葉を記録する文字を発明することによって飛躍的に増強され、その後も科学技術の発達に伴って多様多彩に発展してきた。そして現代は、コンピューターやインターネットを含む情報通信技術(ICT)の革命的進化によって、情報伝達の速度・範囲・容量が飛躍的に高まり、情報が果たす役割が驚異的な勢いで大きくなってきている。
 情報通信技術の進化と普及は、現代社会におけるコミュニケーションの様相を一変させ、情報がもたらす力を巨大にした。現代の高度情報化社会を生きるために情報通信技術が必要なことは言うまでもないが、情報を運ぶ乗り物としての言葉を通して理解・表現する能力や画像・映像・図表・数式などを解釈・作成する力や、情報を何のためにどう使うかを決める主体としての人間力が重要であるという点は、従来も現代も変わらない。
 情報リテラシー教育から、言葉と人間の教育を欠くことができないのは、そのためである。

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