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現行デジタル・ラテン・ファンク最高峰 〜 シマファンク

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Cimafunk / El Alimento

若手ラテン・ファンク最高峰、キューバのシマファンク(エリック・イグレシアス・ロドリゲス)の新作『El Alimente』(2021)がずいぶんいいですよね。ジョージ・クリントンが参加しているオープニング・トラックなんか、まるでPファンクみたいですよ。

『El Alimento』は二作目にあたるもので、2017年のデビュー作『Terapia』収録の「Me Voy」が大ヒットしたことで一躍シーンの表舞台に躍り出たのがシマファンク。このステージ・ネームはキューバ西部の街の逃亡奴隷(シマロン)からとったものみたい。自身もそれが出自なんだそう。

公式サイトがあるんですが、生年ふくめバイオやキャリア紹介などはいっさい載っていません。ネットで見つかる散発的な諸情報をつきあわせると、どうも2014年ごろからラテン音楽界で活動してきた人物じゃないかと思います。

ともあれアルバム『El Alimente』。多くがコンピューターのフル活用でできているように聴こえます。ファンクもラテンも人力演奏による汗くささが特徴だったように思いますから、ベーシック・トラックのほとんどを打ち込みでやるシマファンクの姿勢はやや特異ですよね。

そんなエレクトロ・ミュージックでありながら、いかにもラテン・ファンクだというだけあるプ〜ンと漂ってきそうな体臭みたいなもの、汗くささが存分に発揮されているのもシマファンクらしさ。コンピューター打ち込みでここまで人間味あふれるサウンドをつくれるのには感心します。

ジェイムズ・ブラウンが最大の影響源に聴こえますが、キューバ音楽にもとからそなわっていた洗練とファンクネスを煮詰めて抽出したようにも思え、その点ちょっとベニー・モレーっぽくもありますね。1970年代サルサの痕跡も鮮明です。

必要最小限の演奏ミュージシャンしか起用していないのに、大所帯でやるゴージャス感に満ちていて、まるでラメきらきらみたいなこのけばけばしい派手さはどうですか。ごった煮のカオス感もあるし、Pファンクなどが実現していたあの世界に濃厚なラテン性をたっぷりぶち込んだシマファンクのこの『El Alimente』、お好きなみなさんにはこれ以上ない一作でしょう。

(written 2022.1.6)

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