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groove is the thing 〜『ブルー・グルーヴ』

(5 min read)

ブルー・ノート公式がたくさんのSpotifyプレイリストを作成・公開してくれていて、たいへん楽しいんだということは、もはやくりかえす必要がないでしょう。そのなかでも今年数ヶ月前に聴けるようになったプレイリスト『ブルー・グルーヴ』(上掲リンク)は傑作ですね。以前このブログでなんども記事にした2018年の『ブルー・ノート・ブーガルー』(↓)と並ぶ楽しさじゃないでしょうか。

『ブルー・グルーヴ』は1960年代中期から現代に至るまでのブルー・ノートのファンキー・チューンを集めたもので、だからつまり8、16ビートの効いたジャズ・ロック、ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンクとか、そんなグルーヴィなものばかり、しかも10時間以上。その長さゆえ、実はいまだ全貌は聴けていませんが、その必要もなし。きょうはこのへん、あしたはまたべつなところと、適宜ピック・アップしながらブラブラ流して楽しんでいればOKなのが配信プレイリストですからね。

よく知っているものもありますが、なじみが薄かったりいままで知らなかったりした曲ばかりで、ぼくってなんて無知なんだろうとイヤになっちゃいますけど、言い換えればブルー・ノートは実にいろんなファンキー・ミュージックを録音したんだなと感心します。ストレートなジャズのなかにだってこんだけあるんだという、だからやっぱりジャズは4ビートだとかにこだわりすぎると楽しさが減りますね。

つまりはぼくのばあい、4ビートのメインストリームなストレート・ジャズも大好きだけど、それ以上に主にブラック・ミュージシャンのやるブーガルー・ジャズっていうか、ファンキーでグルーヴィなソウル・ジャズ、ラテン・ジャズ、ジャズ・ファンクなどが本当に好きで好きでたまらないっていう、そういう嗜好の持ち主なんでしょうね。快感に大きな差がありますからね。

プレイリスト『ブルー・グルーヴ』を流していても、その強靭なグルーヴ感にやられちゃいますけど、実に多様な曲が並んでいるこのプレイリストを貫く軸になっているのが、ずばり “groove is the thing” ということですね。そういったジャズ・チューンが主に1960年代中期ごろから登場しはじめたというのは意味深いことです。ファンキーでグルーヴィなソウル・ジャズの台頭は、ちょうど公民権運動やブラック・アメリカンの意識の高揚と軌を一にしていたんだなとわかりますよね。

ホレス・シルヴァー、ルー・ドナルドスン、ドナルド・バード、グラント・グリーン、リー・モーガン、ハンク・モブリー、スタンリー・タレンタインといった1950年代から活動してきて、60年代にファンキー化して花開いたようなジャズ・ミュージシャンたち。ブルー・ミッッチェルのように50年代は典型的ハード・バッパーだったのが70年代にはジャズ・ファンクをやったようなひとたち。

また、ラリー・ヤング、ジャック・マクダフ、ドクター・ロニー・スミス、ボビー・ハッチャースン、ルーベン・ウィルスン、ジーン・ハリス、ハービー・ハンコックらのように1960〜70年代に一斉に噴出した新世代のグルーヴ資質を持つニュー・タイプのジャズ・ミュージシャンたち。

さらには、ロバート・グラスパー、カサンドラ・ウィルスン、ソウライヴ、メデスキ、マーティン&ウッド、エズラ・コレクティヴなどなど、1990年代〜21世紀型の新世代ジャズ・ミュージシャンたちだって、このプレイリスト『ブルー・グルーヴ』には収録されています。つまりおおよそ60〜70年間にわたるという、長いタイム・スパンを見わたしたものなんですね。

驚くのは、そんな長期間にわたる、世代も異なるさまざまなタイプの音楽家による多様なジャズ・チューンを一堂に会したプレイリストであるにもかかわらず、フォーカスというか中心軸がまったくブレていない、一個の明確で明快なグルーヴ・タイプで貫かれているということですよ。ブルー・ノート・レーベルがひたすら追求してきたグルーヴィなブラック・ジャズとは、やはり時代を超える普遍性とパワーを持ち続けているものなんでしょうね。

(written 2020.8.27)


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