見出し画像

ジャズとリズム&ブルーズのクロスするあたりで 〜 ハロルド・ヴィク

(3 min read)

Harold Vick / Steppin’ Out

ジャズとリズム&ブルーズをまたにかけて活動したテナー・サックス奏者、ハロルド・ヴィク。そのブルー・ノートに残した唯一のリーダー名義作『Steppin’ Out』(1963)も、こないだレーベルの公式ソーシャル投稿で知りました。

この『ステッピン・アウト』、なんとパーソネルがボス以下、ブルー・ミッチェル(tp)、グラント・グリーン(g)、ジョン・パットン(or)、ベン・ディクスン(dr)なので、以前書いたビッグ・ジョン・パットンのアルバム『オー・ベイビー!』(65)と同じなんですね。

同一セッションから二作に分割してリリース時の名義だけ変えたというんではなく、ハロルドのほうが二年ほど先に録音していますけど、正直言ってこのメンツで60年代前半のブルー・ノート・ジャズとくれば、中身は聴かずとも知れたようなもの。似たようなメンバーでの録音があのころ山のようにありました。

ハロルドの本作も、一曲だけスタンダード・バラードの「ローラ」をやってはいるものの、それ以外はリーダー作となっているシンプルなリフ・ブルーズばかり。近年ジャズとブルーズとの切断が声高に言われますが、新世代ジャズがどうあれ、ぼくなんかいまだこうしたソウルフルなハード・バップ・ブルーズが大好き。

そんなわけですから、音楽内容としてはべつにとりたててどうということもなく、このブログでもいままでさんざん書いてきたことのくりかえしになってしまうので省略。いやあ〜、ほ〜っんとにハード・バップでのブルーズってどうしてこんなに楽しいのでしょうか。

歴史をたぐってみれば、モダン・ジャズというかビ・バップはジャンプ・ミュージックが産みの親。そしてジャンプはその直前のカンザス・シティ・ジャズの亜種だったんですから、ってことはハード・バップ(and リズム&ブルーズ)だってカウント・ベイシーらのやったああいったブルーズ・ジャズが直系の祖父にあたるわけですからね。

本作で一曲だけブルーズではない3「ローラ」にしたって、パットンの弾く雰囲気満点のメロウ・オルガン・サウンドに乗せてテナーがスウィートにメロディをつづる様子を聴いていれば、これだってリズム&ブルーズ・バラードと同種のものだとわかります。

ってことで、ジャズとリズム&ブルーズの両方に足を入れていた、特にサックス奏者はあのころ多かったし、ハロルド・ヴィクの本作もそんな系譜につらなる一作に違いありません。

(written 2022.11.18)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?