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曲がいい、声がいい 〜 シーロー・グリーンのカントリー・ソウル

(4 min read)

CeeLo Green / CeeLo Green Is Thomas Callaway

萩原健太さんに教えてもらいました。

シーロー・グリーン(CeeLo Green)の新作アルバム『シーロー・グリーン・イズ・トーマス・キャラウェイ』(2020)を聴きました。シーローはソウル〜R&B歌手と言っていいでしょうね。今回の新作はダン・オーバック(ザ・ブラック・キーズ)のプロデュース。ナッシュヴィルで制作・録音されたみたいですよ。

もうなんといってもシーローのばあいはこの声が大好きで、それだけで4、50分は飽きずに続けて聴いていられるんじゃないかと思うほど。このちょっと塩辛いような甘くてスウィートなような、くぐもっているようで明るく開けたような、軽いようでずっしりしているような、この声質、トーンがですね、ぼくは本当にたまらないんですよね。

だからシーローならたぶんどんな曲を歌っても聴けるぞと思うくらいなのに、今回の新作では曲がほんとうにいいんですね。良曲粒揃い。収録の12曲、基本、ぜんぶ自作のようですけど、ダン・オーバックとのコラボで、っていうかインティミットでプライヴェイトなつきあいのなかで自然と生まれた曲々らしく、アルバム用っていうよりも仲良くセッションしているうちにできちゃったから録音しておこうとなったんですって。

そんな自然体な姿勢が曲のつくりにも反映されていて、サウンドのまろやかなコクのある味わいとともに、1970年代っぽいニュー・ソウル、スウィート・ソウルふうなフィーリングをかもしだしているのが本当に気持ちいいですね。カーティス・メイフィールドとか、それから今年亡くなったビル・ウィザーズとか、ああいったひとたちの作品で聴ける感触に近いです。

アルバム題になっているトーマス・キャラウェイというのはシーローの本名で、だから今回の新作は、いままでより以上に<素>のシーロをみせているということかもしれないです。ナッシュヴィルでのセッションだったことと関係あるのか(ないような気もするけど)カントリー系の人脈もバック・ミュージシャンとして参加して演奏しているそうで、オーガニックな雰囲気がたしかに聴きとれます。

曲によってはデジャ・ヴュっていうか、はじめて聴くはずなのにずっと前から知っているおなじみの曲だと錯覚させるようなフィーリングもあって、たとえば2曲目「リード・ミー」、8「ドゥーイング・イット・オール・トゥゲザー」なんかがそうで、曲のスムースさ、ナチュラルなよさがそんなところにも出ているんだなあと感じます。

適度にエモーショナル、適度に乾いてアッサリで、カントリー・ソウルな感触もあるし、ポップでありかつソウルフル/ファンキーで、ときにはメロウになったりもして、つまり『シーロー・グリーン・イズ・トーマス・キャラウェイ』っていうこのアルバム、要ははなにごともやりすぎない中庸さが肝心だっていうちょうどいいポイントにおさまっている佳作だなと思いますね。

(written 2020.9.8)


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