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メアリー・ルー・ウィリアムズのファンキー・ライヴ

(3 min read)

Mary Lou Williams / Live at the Cookery

1960年代以後のメアリー・ルー・ウィリアムズは黒人教会音楽に傾倒していたわけで、それであんなファンキーなピアノを弾くようになったんだと思いますが、アルバム単位で、そんな感じのメアリー・ルーのピアノ演奏を、できればライヴかなにかで、じっくり味わえるものはないのかとSpotifyでさがして、これはどう?と思って聴いてみたのが『ライヴ・アット・ザ・クッカリー』(1990)。

クッカリーというのはニュー・ヨークにある場所らしく、このライヴは1975年のものみたいです。ベース(ブライアン・トーフ)とのデュオ演奏なんですけど、聴いた感じこれだったらドラマーが入ってトリオでやったほうが音楽性が伝わりやすいし、グルーヴも出たのになと思いますが、でもこれはこれで悪くないですね。

ファンキーなブルーズ・チューンが多いという印象で、まずなんたって冒頭1曲目のタイトルなんか「プレイズ・ザ・ロード」ですもんねえ。モロそのまんまのゴスペル・ミュージックじゃないですか。ブロック・コード中心にがんがん弾くメアリー・ルーのピアノ・プレイはアーシーそのもの。こういうのが教会音楽に傾倒していたという立派な証拠のひとつですね。

そのほか続けて2曲目がスロー・ブルーズな「ブルーズ・フォー・ピーター」、4曲目は完璧なブギ・ウギの「ロール・’エム」、曲題に反しあまりブギっぽくない7「ワルツ・ブギ」、10曲目ではなんとマイルズ・デイヴィスの「オール・ブルーズ」までやっているんですよね。ラスト12曲目もブルーズ・ナンバー。ぐいぐいファンキーに盛り上げるピアノ・スタイルがたまりません。

意外におもしろいなと思えるのはいくつもやっているスタンダード・バラードです。3曲目「アイ・キャント・ゲット・スターティッド」、6「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」なんかではただキレイに弾いているだけですが、9「ザ・マン・アイ・ラヴ」後半での熱の帯びかたはどうでしょう、これ、完璧なるファンキー・ゴスペル解釈じゃないでしょうか。演奏テンポも上げ、ブロック・コードでがんがん弾くまくるさまが爽快です。

バラードじゃないけどやはりスタンダード・ナンバーの11曲目「マック・ザ・ナイフ」もやはり同様に高揚する演奏。これらと、もとからブルーズである曲もあわせ、メアリー・ルーのこの時期のスタイルがよくわかるもので、ぼくみたいなファンキー・ジャズ大好き人間にはなかなかこたえられないライヴ・アルバムですよ。全体的にはほどほどな印象ですけどね。

(written 2020.12.29)

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