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ルデーリの三作目ライヴ・アルバムでもダニエルのドラミングがいい

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Ludere / Live at Bird’s Eye

国籍を問わず現代最高のジャズ・グループなんじゃないかと思うルデーリ(Ludere)。ブラジルのひとたちですけど、ルデーリのジャズにブラジル色は皆無です。ユニヴァーサルな、どこへ持っていっても通用する音楽をやっていますよね。某デスクウニヨンのサイトなんかには「現行ブラジリアン・ジャズの最高峰」とかって書いてありますけども。

そんなルデーリの、いまのところの最新作(2020年10月時点)はライヴ・アルバムで、タイトルも『ライヴ・アット・バーズ・アイ』(2019)。スイスはバーゼルで行われた生演奏を収録したものですね。これ、ぼくの聴くところ、まだ三作しかないとはいえ、ルデーリの最高作と思える内容なんです。

ルデーリのことは、それまでの二作品ともこのブログで書いてきましたが、いちおうくりかえしておくと、リーダー格がフィリップ・バーデン・パウエル(ピアノ)で、くわえてルビーニョ・アントゥネス(トランペット)、ブルーノ・バルボーザ(ベース)、ダニエル・ジ・パウラ(ドラムス)のカルテット編成。活動をはじめて四、五年経つようです。

最新作『ライヴ・アット・バーズ・アイ』を聴いてもよくわかることですけど、ルデーリのキモを握っているのはダニエルのドラミングなんじゃないかというのがぼくの見方。+フィリップ・バーデンのピアノの躍動感ですけれども、リーダー格のフィリップ・バーデンとダニエルの相乗作用で演奏全体にイキイキとしたグルーヴが生まれている、それがルデーリ最大の魅力じゃないかと思えます。

『ライヴ・アット・バーズ・アイ』だと、たとえば1曲目、2曲目あたりの快活なアップ・ビート・ナンバーでそれが特に顕著。個人的にダニエルのドラミングの大ファンなんで、そればっかり聴いてしまうというようなところもありますが、ひいき目を抜きにしても最高のドラマーだなと思いますねえ。スネアの込み入った使いかた、シンバル・ワークの繊細さなど、細かい神経が行き届きつつ、ビートを細分化して全体として躍動を生み出すドラミングですよね。

それを引き出しているのが、ルデーリではフィリップ・バーデンのピアノ演奏ではあるんですけれども。ライヴ演奏だということもあって、いっそう四人のプレイぶり熱く、ノリのいい集団演奏を聴かせてくれているなという印象です。21世紀の現代ジャズはソロとアンサンブルのバランスをとりつつ、ソロばかりでなくアンサンブルのカラーといいますか、スポンティニアスなアンサンブル・ワークでも聴かせるという、そのアンサンブルはあたかも即興演奏であるかのような、いわばインプロヴァイズド・アンサンブルとでもいうような演奏で、ソロをそのなかに効果的にはめ込んでいくという、そういった手法を採用していることが多いです。ルデーリもまたしかり。

ルデーリは、それでもまだ個人ソロの比率が高いかなと思いますね。アルバムは3曲目以後やや落ち着いたフィーリングで進みますが、どの曲でもバックのダニエルのプレイぶりが際立っていますね。グループの躍動感が最高潮に達するのがラスト8曲目の「アフロ・タンバ」。二作目にあった曲ですが、ここでは後半ドラムス・ソロもはさみつつ、その終盤からテーマ合奏部が出てくるあたりのリズムのスリルはほんとうにすばらしいです。

(written 2020.10.1)

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