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ゲキアツだった中村海斗カルテット・ライヴ in 大阪神戸 2 days

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2023年4月27日大阪梅田Mister Kelly’s、28日神戸100ban Hallと二日続けて中村海斗カルテットのライヴに行ってきました。アルバム『Blaque Dawn』リリースにともなう全国ツアーのラスト二日間で、バンドもアルバムと同一の佐々木梨子(サックス)、壷阪健登(ピアノ)、古木佳祐(ベース)。

いはゆるレコ発ライヴですけれど、アルバムからの曲をやるという感じではなく、海斗の新曲が中心の構成。アルバム・ナンバーは1stセットで数個やったほかアンコールでも演奏されましたが、それだけ。こうした前向きの新進気質はいいことですよね。

二日間ともカルテットの演奏はゲキアツで、以前アルバム・レヴューでも書きましたが四人とも超饒舌で燃え上がるような情熱を聴かせてくれました。ライヴだとそれがいっそう激しかったような印象です。特に海斗と梨子のプレイが目立っていましたが、ほかの二名もすさまじかった。

にもかかわらず海斗と梨子の表情はどこまでも淡々としていてクール。顔や体の動きにサウンドがくっきり表出されていた健登と佳祐とは対照的で、観客の反応もなにもいっさい気にするそぶりもなく能面のままであんなにも熱のこもったプレイをくりひろげるなんてねえ。

2020年代の新感覚ジャズ・ドラマーとしてすらずば抜けた異次元の叩きっぷりをアルバムでも聴かせていた海斗のドラミングは、ライヴだとそのあまりにも多い手数音数と、さらに複数のリズムが多層同時進行していくポリ・レイヤードなスタイルが、しかし実はかなりさわやかなものでもあるんだと、生で聴きいっそう実感しました。

軽やかでしなやかな強靭さ&重厚感とでもいうか、あれだけのサウンドを、しかも音量だってバカでかいのに(神戸ではドラム・セットに一本もマイク立っていませんでしたからオール生音であんなにっていうのは信じられない気分)、振幅のきわめて小さいコンパクトな打撃で実現しているっていうのは驚きでしたね。

でありながら、梨子のアルト・サックスとあわせどこかクールで爽快。情熱的な演奏なのに暑苦しく圧倒する感じではなく、春の涼しい風にすーっと当たっているようなさわやかさがあります。外見が落ち着いていて無表情だったこともそう感じた一因かも。

いっぽう健登のピアノと佳祐のベース・プレイはフレーズごとに顔や体が大きく動くもの。エモーションが表面に出てくるタイプなんでしょう。汗も飛び散って、ハードなフレイジングのときには顔をゆがめ肩が動き体をよじるような演奏ぶりでした。二名ともそれぞれ即興フレーズを口ずさみうなりながらユニゾンで弾いていましたし。

四人ともたがいの出す音をとてもよく聴いていて、フレーズ構成の流れを予測しながら次の瞬間の音をピタリ合わせていくバンド演奏ぶりも一体感を感じるもので、この能力は特に海斗が高いようでした。次にピアノやサックスがどんなタイミングでどんな音を出すか、意外なものでも読めているような瞬間がたくさんあって、ややビックリでしたね。

このへんは同一メンバーによるツアー最終盤ということで、その点ではもちろんバンドで音楽が練り込まれていたという面もあったのでしょう。にしてもあまりにも四人の息はピッタリ。しかもすさまじい熱を感じる音楽でありながら、ライヴ終わりでは(新世代らしい)柑橘系のさっぱりしたあとくちを残すライヴでした。

二日連続で通って両日ともライヴ前ライヴ後とご挨拶し(そういうファミリアーなヴェニューだった)、どうやら海斗には顔を憶えていただきました。

(written 2023.4.30)

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