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コロナ時代だからこその加那 〜 平田まりな

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平田まりな / 加那 〜 古典コンテンポラリー すべての愛しきに向けて〜

三線で弾き語る奄美の島唄者、平田まりなの新作アルバムが出ました。『加那 〜 古典コンテンポラリー すべての愛しきに向けて〜』(2022)。まりなについては、以前2019年のデビュー作をとりあげて書いたことがありましたね。

そもそもまりなにはひめまりという二人組ユニットで出会ったんですが、ひめまりのほうはニュースを聞かなくなったので、活動休止中ということなんでしょうか。それでもまりな単独で二作目が出て順調に活動していて、うれしいです。↓写真はひめまり。

音楽家ですからね、御多分に洩れずコロナ禍で苦労していることはふだんのソーシャル・メディア投稿からもうかがえて、今回の『加那』もCDを全国的に展開すべくの対人販促イベントなどほぼできず。それでも一作目『跡(アシアト)』とのコロナ時代らしい大きな違いはSpotifyなどサブスクで聴けるということです。

さらに、一人弾き語りだけで構成されていた前作に比し、今回は祖母の松山美枝子がお囃子でほぼ全曲に参加。そうじゃないラスト7曲目では従姉妹の西平せれながハンド・パンを演奏しているっていう、奄美島唄でハンド・パンが聴けるなんて、思っていなかったです。

そのハンド・パンが聴こえる7曲目「行きゅんにゃ加那」ですけど、まずはハンド・パンだけの伴奏に乗りまりなが歌いはじめます。ヴォーカル・スタイルは三線弾き語りのときとなにも変わらないとはいえ、こんな奄美島唄はまったく聴いたことないぞと思う斬新なサウンドスケープで、引き込まれます。途中から三線もくわわると、ますますいい香り。

これ以外の六曲は従来的な奄美民謡の趣きですが、今回すべての曲題末尾に「加那」ということばが付いています。アルバム題にもなっているわけですが、これは「愛しい人、好きな人」を意味する奄美語だそう。コロナ時代だからこそ自分の歌を届けたいというまりなの気持ちが伝わってきますよね。

松山美枝子が参加していることでサウンドにふくらみとひろがりが出ているし、まりな自身の三線と歌は以前と変わらないシャープさと丸み。いっそう強靭さを増したんじゃないかとも思えるトーンで、声の色には独特の憂いや哀感を保ちながらも、三線の音色はどこまでも鋭敏。

ファミリアーな親近感とか落ち着きも聴けるなと感じるのは、一族三名でつくりあげた音楽だということにくわえ、まりな自身の成長ということと、やっぱりこんな時代だからこそ歌で愛を届けたいという思いが結実したものでしょう。

(written 2022.2.12)

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