ベテラン・ロック・ミュージシャンの心意気 〜 ジ・イミーディエット・ファミリー
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The Immediate Family / Slippin’ and Slidin’
ジ・イミーディエット・ファミリーとはアメリカ西海岸のベテラン・セッション・ミュージシャンたちで2018年に結成されたバンド。ダニー・コーチマーを軸に、リーランド・スクラー、ラス・カンケル、ワディ・ワクテル、スティーヴ・ポステルの五人です。2020年の新作EP『スリッピン・アンド・スライディン』を聴きました。
このひとたちは基本スタジオ・セッション一筋で、過去にだれかとレギュラー・バンドでも組んで定期的に活動するなんてということはなかったんじゃないかと思いますが、どういうわけで2018年にそうなったんでしょうか。年老いてきて、逆にだんだんそんな意欲がムクムクと湧き出てきたということでしょうか。
ともあれ、1970年代にキャロル・キングとかジェイムズ・テイラーなどなど数々の音楽家のセッションでバックをつとめてきたミュージシャンたちの、その音楽性が、21世紀だからといって変化しているわけもなく、聴き慣れた、おなじみの世界がEP『スリッピン・アンド・スライディン』でも展開されています。
いかにも西海岸のロック・バンドらしいなっていうのが第一印象で、ちょっと聴いた感じ、全盛期の(つまり解散前の)イーグルズっぽい雰囲気があるなと思います。その上、個人的にはフォーリナー風味も感じますね。特に2曲目の「ニュー・ヨーク・ミニット」のサビのリフレインはフォーリナーっぽい。
収録の五曲とも、2020年という時代とはまぁ〜ったく響き合わない、レトロな、時代遅れの、ロック・ミュージックなんですけれども、音楽の楽しさ、美しさ、真摯で真剣な姿勢は、そんなことと関係ありません。ぼくは世代的にも1970年代ロックに親近感をおぼえる人間なんで、こういう音楽は大歓迎です。
ほぼ全編エレキ・サウンドなのは、彼らの往年の仕事を知っているとやや意外な感じもします。アクースティックなサウンド、特にバンドの軸であるギターのダニー・コーチマーはそんなセッションが多かったように思いますからね。このEPではエレキ・ギターを中心に弾いていますよね。
といっても、地味に黙々とサウンドの下支えをするというダニーの本領はやはり発揮されていて、折々で聴こえる派手めなギター・ソロはたぶんぜんぶワディ・ワクテルによるものでしょう。スライド・プレイなんかもやっていて、それも実にいい感じに響くヴィンテージ風味。
4曲目だけ、演奏が終わったら拍手と歓声が聴こえるからライヴ・テイクなんだろうなと思ったら、しっかり「ライヴ」とトラック・リストに書いてありました。これだけしかしどうしてライヴを収録したんだろうと思わないでもないですが、基本ライヴ・ツアーを活動の中心に据えているバンドなんだと思います。
それがところが2020年はCOVID-19のせいで年間通じ(21年前半だっておそらく)ほぼライヴはできませんでしたから、一曲だけ過去に収録したライヴ音源を混ぜておいたということなんでしょうね。スタジオ・テイクとなんら違わない熟練の完成度なのはさすがの腕前です。
っていうかスタジオ収録だって、漏れ聞く話ではこのバンド、全員集合の同時一発なライヴ演奏でやっているそうで、しかもその際、通常だと立てられるついたてもなしだそうですよ。やりにくいんじゃないか、と素人だったら心配しますが、ベテラン・スタジオ・ミュージシャンたちは意に介さないんでしょうね。
(written 2020.11.20)
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