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チェンチェン・ルー・インタビュー in『台湾ビーツ』

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こないだチェンチェン・ルー(在米台湾人ジャズ・ヴァイブ奏者、大好き)自身のInstagramストーリーで紹介されていて知ったんですが、『Taiwan Beats』という台湾の音楽&カルチャーのネット・メディアにチェンチェンのインタビュー記事が掲載されました。

チェンチェンはこの手の情報をたいていストーリーでしか紹介せずそのままにしちゃうので24時間で消えてしまい、それじゃあちょっともったいないよなあと思える内容だったので、こうしてぼくが書いているという次第。

っていうのも要注目だったのはその『台湾ビーツ』、中英日の三カ国語メディアなのでインタビューの日本版もあったことです。台湾では大注目のチェンチェンですが、まとまった長さの日本語コンテンツはいままでなかったですからね。

このまえも書きましたが五月下旬チェンチェンは自身のバンドで台湾ツアーをやったので、『台湾ビーツ』もそのとき意を決して取材したようです。ふだんはニュー・ヨークを拠点にUSアメリカで活動していて、ジェレミー・ペルトに帯同して欧州ツアーもときどきやっていますが、コンサートで母国に帰ってきたのは初めてでしたし。

いつでも個人的には音楽家のデビュー前とかキャリアがどうだとか、考えかたを知るとか、その手のことはすべて音楽作品をよりしっかり理解したい一心で調べていること。その一点でのみ読む価値を見出していて、それじたいはべつにそんなねえ。経歴や頭のなかは「音に出る」と思っていますし。

その点今回のチェンチェン・インタビューは有益。たんにいままで日本語であまり紹介されてこなかった音楽家だから、どういう人物なのか知れただけでも入門者にはありがたいでしょうし、それ以上に音楽性について理解する大きな手がかりにもなっています。

ニュー・ヨーク移住前、フィラデルフィア時代に現在のソウル・ジャズな演奏スタイルを身につけたとわかったのがぼく的には意味の大きなこと。やはり全米の都市都市で音楽性にも個性、地域差がありますから。フィラデルフィア時代に、と語っていたのは納得でした。

何年ごろとは書かれていませんがフィリーでロイ・エアーズのトリビュート・ショーがあって、そのアンサンブルでロイの役目を依頼され引き受けたことがあるらしいです。それが大きなきっかけだったのかもしれません。リズム&ブルーズ/ソウルとジャズの合体融合を象徴するようなヴァイブ奏者でしたロイは。

そうしたことはチェンチェン一作目『ザ・パス』のサウンドを聴けばだれでも納得できることでしたし、さらに進んでヒップ・ホップ/R&B的な感性にまで踏み込みつつあるのが二作目『コネクティッド』ではあきらかでした。ライヴでロイのパートをやったことがきっかけで、このような方向性が明確になったという可能性があると思います。

台湾ツアーをやったバンド・メンバーのこともくわしく紹介されていて、特にチェンチェンの音楽にはなはだ大きく貢献しているプロデューサー/ベーシストのリッチー・グッズがどんな音楽家であるのかしっかり語られているのも重要な情報です。

一作目制作にあたり南管(中国伝統楽器)を学んでいたことも語られています。台湾出身という文化的ルーツさがしの一環だったようで、たしかに『ザ・パス』にはそんな要素もわりと反映されています。ジャズとリズム面での共通性があるという指摘もおもしろかった。

新作『コネクティッド』の内容に深くかかわることですが、ニュー・ヨークでひとりでやっている台湾人ジャズ奏者、しかも若い女性であるということの苦悩苦労も語られていて、必ずしも自分の音楽に関係ないことがらだと本人は言うんですが、個人的生活の内省が『コネクティッド』には色濃く反映されていただけに、決して無視はできません。

(written 2023.7.11)

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