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このビッグ・バンドは快感だ 〜 ビッグ・ホーンズ・ビー

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Big Horns Bee / Dancin’ with Jazzy Beats

これはちょっとしたEPっていうかシングルに近いものでしょうか、ビッグ・ホーンズ・ビーの『ダンシン・ウィズ・ジャジー・ビーツ』(2020)。たったの三曲14分ですからね。日本のバンドです。萩原健太さんが関係しているとのことで、知りました。

それでこれはジャジーなスウィング〜ジャンプ系のビッグ・バンドですよね。曲によってはかなりポップだったりしますけど、音楽の土台はジャズ・ビッグ・バンドだなと思います。たった三曲しかぼくは聴いていないんでなんとも言えないのではありますが、ジャズ・ビッグ・バンドのなかにかなりラテンな雰囲気というかリズムも混じり込んでいて、かなり好きですね。

EP『ダンシン・ウィズ・ジャジー ・ビーツ』だと、まずなんといっても1曲目「キー・ステイション」が最高にカッコよくてですね、ほんとうに気持ちいいんです。リズムはかなりラテン。実際、パーカッショニストも参加してガチャガチャと細かいビートを混ぜ込んでいるのが快感です。ドラマーのシンバルの使いかたもグッド。

ホーン・アンサンブルをだれが書いているのか、リズム・セクションもふくめ全体のアレンジをやっているのがだれか、知りたいところなんですが、1曲目だとラテンふうなところと4/4拍子のストレートにジャジーなパートとの接合具合も絶妙にうまくて、なかなかの実力者なんじゃないでしょうか。こなす演奏者たちもみごとです。各人のソロは平均的な内容でしょう。やっぱりなんといってもこの1曲目ではリズムですよ、ドラマーとパーカッショニスト。

2曲目「オー、イッツ・イージー・トゥ・ダンス(ウィズ・ジャジー・ビーツ)」では英語ヴォーカルが入るんですが、それでもちょっと日本の歌謡曲っぽい雰囲気を漂わせています。たぶんそれは英語の発音に日本語なまりが出ているからなんじゃないかと思いますね。曲想もちょっぴり米米クラブっぽいですし。実際、関係あるそうですよ。ジャジー・ビーツとの副題に反し、この2曲目にはジャジーな雰囲気が薄いです。歌謡曲の伴奏をやる日本の(ジャズ系)ビッグ・バンドってむかしはいくつもありましたが、そんな雰囲気に近いかなと感じます。

3曲目「カーム・ビフォー・ザ・ストーム」はなかなかおもしろく、ちょっとクラブ・ミュージックっぽい、それも1990年代的な英ロンドンのクラブ・ジャズの雰囲気を持っています。冒頭からのしゃべりのせいでそう感じるだけなんじゃないかと最初は思っていましたが、ジャジーな4/4拍子の定常ビートが入ってきてからもUKクラブ・ジャズっぽいですよ。

でもって、しばらく聴いていると、この3曲目は現代的なNYラージ・アンサンブルっぽく聴こえてきたりもするんで、おもしろいですね。やはり2020年のリリース作品だけあるっていうコンテンポラリーさは発揮しているというわけでしょう。ここでもラテン・パーカッションが活躍していて、ラテン・ジャズな雰囲気をも出しているのだって現代的。

個人的には1930年代後半的なジャズ・ビッグ・バンドの基本を保ちつつ、濃厚なラテン・ジャズの雰囲気を持ち、ラテン8ビートとジャズ4ビートのあいだを行ったり来たりするといったあたりにも、2020年代的なコンテンポラリーさをぼくは感じるし、ビッグ・ホーンズ・ビー、なかなかあなどれない存在じゃないでしょうか。ジャケット・カヴァーのデザインはレトロ・スタイルですけど、なかなかどうして。ストレートにカッコよく、聴いて快感ですし。

(written 2020.9.11)

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