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ビートルズ『メディテイション・ミックス』の効用

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The Beatles / Meditation Mix

12月4日にリリースされたビートルズの『メディテイション・ミックス』(2020)というEP。ビートルズの公式Instagramで偶然発見しましたが、これ、たぶんストリーミングだけのアルバムで、ダウンロードもあるのかどうかわかりませんし、フィジカルはもちろんないでしょう。

っていうのは、これ、新ミックスとかじゃなくて、いままでに発売済みのものからちょこちょこっと六曲拾って並べただけの(プレイリスト的な)ものなんです。それでわざわざ『メディテイション・ミックス』と銘打って新リリース品として2020年暮れに紹介するのには、なにか理由があるのかもしれませんが、よくわかりません。

例の2009年リマスターとか、2018年の『ワイト・アルバム』拡大版ミックスとか、2019年の『アビイ・ロード』拡大版新ミックスなど、並んでいるなかで、ちょっと目をひくのは3曲目の「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」と4「シー・オヴ・タイム」ですね。

「マイ・ギター・ジェントリー」は『ラヴ』ヴァージョン。これはなかなかめずらしいですよ。『ラヴ』なんて、あれはいつだっけ?2006年か、シルク・ド・ソレイユのステージで使うためのリミックス集だったんですけど、いちおうCD買ったものの、一回聴いてつまんないと思ってそのまま放ったらかしでした。

「シー・オヴ・タイム」はビートルズのメンバーの曲ではなくジョージ・マーティンが書いたシンフォニーで、アルバム『イエロー・サブマリン』B面から。これもなかなかレアですよね。ビートルズのオフィシャル・ディスコグラフィからは外されることが多い作品ですし、B面にはビートルズのメンバーがかかわっていないですからね。

しかしこのEP『メディテイション・ミックス』のなかでは、これら二曲とも楽しく聴こえますので、これも一種のコンピレイション・マジックですよね。さて、ビートルズと瞑想といえば、まっさきに頭にうかぶのがマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーとの関係。くわしいことはみなさんご存知なので省略しますが、関係は1967年にはじまって、四人でインドにも行ったし、ジョンはすぐ離れたものの、その後もしばらくメンバーは没頭していました。

今回の『メディテイション・ミックス』EPは、そこらへんの1967〜68年ごろの内省的な曲を集めているのかというとそうともかぎらず、またジョージがシタールやタブラなどを活用して哲学的な歌詞を歌ったあからさまにインドふうな曲もまったくふくまれておりません。

じゃあいったいなにがメディテイションなのか?2020年12月に考えられる瞑想とビートルズ・ソングとの関係とは?となるとよくわからないんですが、これも一種のCOVID-19パンデミックに起因するコンピレイションということなんでしょうね。ステイ・ホームがあたりまえになって、もちろん毎日通勤しているかたもおいででしょうが、自宅でのリモート・ワークがこれだけ一般的になり他人とも(密に)会わなくなれば、自然と自己内省的になるんじゃないでしょうか。

レコード会社側としても、そんな事情関係なくむかしもいまも大人気のビートルズの楽曲群のなかから、そんな自宅でくつろいだり、瞑想したりとまでは言わないまでもみずからをかえりみる時間を持つようになっている世界のみんなのために、ちょこっとコンピレイションでも届けてみれば、これまたあるいは楽しんでもらえるかもしれないっていう、そんな意図があったかもしれないですね。

自室でリラックスしてゆっくりのんびりしながら自省するための時間としては、この『メディテイション・ミックス』EPの約18分はぼくには短すぎるんですけど、だからこれをいいきっかけに、自分でプレイリストでもつくってみようかなと思います。リラクシング・ビートルズっていうか、決して激しかったり快活だったりしない、落ち着いた雰囲気のメディテイション向きの内省的な曲だけ集めてもそこそこの時間になるはずですから。

(written 2020.12.11)

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