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チルな台北ナイト 〜 リニオン

(3 min read)

LINION / Leisurely

bunboniさん経由で知りました。

レイチンと同じくこれも台湾の若手音楽家、リニオンの二作目『Leisurely』(2020)は、まさしく大都会台北の洗練されたナイト・ムードがよく似合うチルな音楽。生演奏ジャズでやったネオ・ソウル・テイストなシティ・ポップといえるでしょうね。

noteで台湾的音楽をどんどん紹介なさっている石井由紀子さん(レイチンのこともお書きだった)によれば、リニオンもインディーズだから配信でならカンタンに公開できるけどCDなどはかなり限定的にしか流通していないんだそう。置いているお店が少ないみたいで、数をつくらなかったってことかも。

でもこれ、傑作ですよね。ドラマー以外は全員台湾の演奏家で、一曲レイチンも参加したものがあります。そ〜れが、もうみんなレベルが高くって、いま、ここ10年くらいかな、アメリカとかイギリスなどの新世代ジャズ・ミュージシャンがもてはやされていますけど、台湾とか(ヴォイジョン・シーを核として)中国語圏でも同様の演奏家が出現しています。

リニオンの本作はそうした現状を如実に反映したもの。そもそもネオ・ソウルはアメリカでもジャズ系のミュージシャンが大勢セッションに参加していたものですし、リニオンが演奏力の高いジャズ演奏家を起用してこうした新世代台湾的ネオ・ソウルをつくりあげるのも道理です。

クロス・ジャンルというか越境的というか、現在の世界の洗練音楽をジャズ/ネオ・ソウル/シティ・ポップなどと分別することにもはや意味なんかなくなっていて、聴き手次第でどう受けとってもいいし、やっているほうはジャンル区分なんか歯牙にも掛けていないっていう。

それにしても心地いいくつろげる本作、聴いていたら、特に夜になって部屋の照明をちょっと落とし、これをいい感じでかければ、極上のおしゃれリラックス・ムードになります。そうしたチルな感覚こそこの音楽のキモですね。対峙して聴き込んでもいいけど、BGM的に流してフィーリン・グッド。

すべてはそんな気分を演出するためにこそ、技術の高い演奏力がとことんまで活用し尽くされているっていう、それがこうした種類の音楽の特性です。1990年代〜21世紀以後的なラウンジ系っていうかクラブ・ミュージック的な感性がしっかり感じられ、結果、聴き流して楽しんでムーディな夜を味わうのがいいんじゃないですかね。

(written 2022.10.5)

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