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ヒップ・ホップR&B、期待の新人 〜 アーロ・パークス

(3 min read)

Arlo Parks / Collapsed In Sunbeams

イギリス人歌手アーロ・パークスのデビュー・アルバム『コラプスト・イン・サンビームズ』(2021)が、一月末のリリース時、かなり話題になっていましたよねえ。ぼくもかなり気に入っています。サウス・ロンドン出身で、ナイジェリア、チャド、フランスの血をひいているという、活動歴まだ二、三年のシンガー・ソングライターです。

アーロ自身は詩人みたいな側面もあるらしく、夭折の詩人シルヴィア・プラスを尊敬しているとのことで、音楽家としてはジョニ・ミッチェルやチェット・ベイカーが大好きっていう情報もありますが、このデビュー・アルバムはそういった方向性じゃなく、ヒップ・ホップR&Bみたいに仕上がっていて、だからこそお気に入りになっているんですね。

ちょっぴり古めっていうか若干レトロな1980年代末〜90年代前半のUKソウルっぽい雰囲気が濃厚にただよっていて、だからいわゆるグラウンド・ビートの香りがプンプンしているのがなんともいえずいいですね。アーロのこの作品についてグラウンド・ビートやソウル II ソウルにだれも言及していませんが、サウンドを聴くと間違いなくあるように思いますよ。

たとえば3曲目の「トゥー・グッド」。これがアルバム中いちばん好きな曲ですが、ギター&ヴォーカルのイントロ部分に続き、エレベ、次いで打ち込みのビートが出てきた瞬間に、アッ!って思います。コンピューター・ビートのつくりかたがまるでソウル II ソウルそっくりじゃないですか。いい曲、いいビート・メイクですね。だれがつくっているんだろう?

かと思うと、そこかしこに今様のベッドルーム・ポップ的な空気感や、内省的なインディ・フォークっぽい眼差しをふわっとまぶしたような、そんな重層的な仕上がりのアルバムで、それでいてオーソドックスかつキャッチー。なんとも心地いいんですよね。声のトーンがこんなキュートなかわいい系だから、向かないひとには向かないでしょうけどね。

文学的な歌詞を素直なヒップ・ホップR&B的なメロディとうまく一体化させていく技術はまだまだ荒削りかなと思わないでもないですが、これがデビュー作ですからね。ジャケットもいい雰囲気で、歌詞、サウンド、ビート・メイクなどなど、トータル・ワークとして味わえるアルバムをつくれるような、そんな期待の新人かなと思います。

(written 2021.4.15)

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