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かなりジャジーなRHファクター二作目『ストレングス』(2)

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The RH Factor / Strength

ロイ・ハーグローヴのヒップ・ホップ・ジャズ・ユニット、RHファクターの話を続けます。きょうは二作目だった2004年の『ストレングス』。ジャケット・デザインは一作目の路線をそのまま継承していますよね。同じデザイナーなんでしょう。

CDがいま手許にないんですけど(あるけど、ちょっと取りにくい、引っ越して以来)、一作目の『ハード・グルーヴ』もそうだったようにRHファクターはヒップ・ホップ・ジャズだけど打ち込みビートは使っていないんですよね。ドラムスもベースも生演奏の人力によるものです。そこはやっぱりジャズ(〜ネオ・ソウル)的なアティテュードですかね。

『ストレングス』は前作を録音したセッションのときの残りトラックだということで、聴いてハッキリするのはネオ・ソウル色が後退し、ストレート・ジャズのインプロが中心になっているなということです。といってもビート感はヒップ・ホップ以後のそれなんですけど。アルバムの半分がインスト・ナンバーなのも特色です。

もうとにかく1曲目「リッチ・マンズ・ウェルフェア」からカッコよすぎて、なんなんですかこの猛烈なスピードとグルーヴ感。アフロ・ラテンなビート感覚でもあって、それはアルバムのほぼすべての曲に言えることですけど、しかし野卑な感じはまったくなく、ジャズらしい都会的洗練がありますよね。

この1曲目だけでノック・アウトされちゃいますが、2曲目「バップ・ドロップ」もまったく同路線の疾走感満点のジャズ・ナンバー。各人のソロ・インプロがまぶしいですね。グルーヴも超快感でたまりません。完璧同一傾向の曲をアルバム冒頭に二つ並べたというのには意図を感じますね。二曲とも最初と最後のホーン合奏も心地いいですし、またソロ・インプロにはジャズ的なスリルと快感があふれています。

3曲目「ストレングス」はヴォーカル・ナンバー。これはややソウルクエリアンズ的なネオ・ソウル色が出ているかなと思います。1、2曲目と違い、ジャズ的なスリルを感じるソロ・インプロはありません。4曲目「リスン・ヒア」はふたたびのインスト曲で、まずサックスのソロから出ますが、二番手ロイのトランペットにはたっぷりの電化エフェクトをかけてあって音をひずませてあります。それも楽しくて。また、ドラマーが1、2、4曲目ではかなり活躍していますよねえ。だれなんだろう?

5、6曲目はやっぱりヴォーカル入りで、ネオ・ソウル寄りの音楽になっています。ジャズ・インプロのスリルには乏しいものの、サウンドのテクスチャー、グルーヴ感など、いかにも21世紀的な新時代の音楽だなと言うことができるはず。ぼくは大好きですね。特にラスト6曲目にはアフロなヒップ・ホップ感覚が横溢していて、グルーヴで聴かせるワン・トラックだなと感じます。

(written 2021.2.8)

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