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レポート:ブランディング&SNS発信塾 第4回事例に学ぶ編「福祉企業の広報の仕事を通じて経験したこと」

 この記事では「ブランディング&SNS発信塾~しょうおう志援塾2022~」の第4回「事例に学ぶ編:福祉企業の広報の仕事を通じて経験したこと」についてまとめたいと思います。9月9日に開催されました。

 塾の概要についてはこちらに記事にしています。

1.講師のご紹介

 今回、第4回「事例に学ぶ編:福祉企業の広報の仕事を通じて経験したこと」は9月9日(金)19:30~21:00に開催されました(21:30まで希望者のみでアフタートーク)。講師は株式会社創心會の広報CSR部部長の河﨑崇史さんに担当していただきました。

河﨑さんのご紹介
 岡山県南を中心に約50カ所で在宅医療、福祉事業所を運営する(株)創心會に介護職として入職。2014年より広報を担当。福祉企業ならではの発信の難しさとやりがいに向き合う。

2.創心會について

 まず、河﨑さんより、会社について説明をしていただきました。創心會は1996年に倉敷市にて開業しました。

どんな事業をしているのか?
 創心會は、誕生から終末期まで、さまざまな地域課題に対し、保健・医療・介護・福祉事業活動を通じて解決するグループ企業です。具体的には、発達支援、就労支援、生活支援、介護支援などの事業を展開しています。

私たちの顧客とは?
 「地域の人すべて=ステークホルダー(利害関係者)すべて」考えて、従業員、利用者、取引先、自然環境、地域社会を対象に考えています。

3.介護福祉の仕事について

 次に、創心會の取り組む介護福祉の業界について説明していただきました。今回の研修は医療福祉関係以外の方もいらっしゃったので、前提の知識としてその後の河﨑さんのお話が分かりやすくなったと感じます。

介護福祉業界の特徴
・2000年に介護保険制度施行し、民間参入が増え、競合が増加。
・ケアマネ(仲介者)や家族(代理人)を介して利用者の獲得となり直接サービスの良さを伝えられない。
・従業員満足度より、利用者満足度が優先されがち。
・3年ごとの制度改正、報酬改正があり長期的な計画が立ちにくい。
・株式会社が運営しているような営利法人への冷視線がある。
・介護保険では、利用者は基本1割負担(9割引き)であり、サービスが淘汰されにくい。
・人材不足が慢性的である。

 これら、たくさんの課題がありますが、創心會では、福祉や介護のやりがいは、地域で生きづらさを感じている人の問題に寄り添うやりがいのある仕事だと位置づけています。例えば、

・家庭介護との違い、その介護の価値を説明できるかが問われる。
・究極のサービス業であり、3Kの仕事である。
 「3K=感謝、感動、革新(イノベーション)」

…ということです。また、会社として、これらにも心がけています。

・企業理念を大切にしている。
・ニーズに合わせて特化型・複合サービスを整備している。
・長期的視点に立って信頼できる政策情報を得られるように関係構築している。
・サービスのPRをするケアマネジャーや家族の向こうにいる利用者を意識している。

4.広報の仕事と、会社のブランディング

 河﨑さんご自身、入社時は介護のスタッフとして入社し、その後、広報担当となったそうです。広報としてまず大切にしていることは「知らせるべく人に知らせるように努める」ということで、言い換えれば「私たちのサービスを知らなかったことで、その人にとって価値のあるサービスが届けられない、ということのないようにしよう」ということです。利用者さん、ご家族、ケアマネジャーが知っているサービスの選択肢が少なければ、その利用者さんに選べる選択肢が少なくなってしまいます。そして、創心會のサービスを知らなかったということのないようにしようということです。

 そして、河﨑さんにとって大きな仕事につながっていくのが、2017年から始まった創心會のブランディングです。まずは、制服、ホームページからブランディングが始まりました。

 制服については、それまで支援する側と支援される側の立場がはっきり分かれてしまわないように、スタッフそれぞれで勤務する服を選んでいましたが、会社の想いを乗せたユニフォームが導入されました。

 そして、ホームページもリニューアルされます。それまでも、福祉業界の中ではホームページへの意識が高く、求人を中心にとがったPRをしていた創心會ですが、ブランディングを意識したホームページとするため、「環境、強み、意思、志、ストーリー(創業の原点から)」などを言語化していくこととなりました。そして、ブランドコンセプトは作業療法士というリハビリ専門職の創業社長のこれまでの仕事への想いを引き継いだブランドコンセプトとなりました。

ブランドコンセプト:「日本一、不親切な親切で。」

 このブランドコンセプトを考える際には、社員にもアイデアを考えてもらい、思った以上に職員が職場のことを理解できていることを認識できたそうです。外部への付き合いがある社長にとって、職場のことが褒められる一方、「職員が自分や自分の仕事が認められていないと感じているのではないか」と感じていたのですが、結果的には、社員が会社の理念を理解し、誇りをもって仕事をしていることに気づいたそうです。

 現場の社員の想いに耳を傾けるプロセスを経ることで、ブランディングを社内に浸透させるインナーブランディングにつながっていたと言います。私には、創心會では日ごろから仕事をする上で大切な心構えが共有されていたからこそ、社員から挙がってきたアイデアも本質的なものとなっていたのだと感じます。

5.「地域への発信」は職員のためでもある

 創心會では、地域への発信は社員が社会的報酬や誇りを得ることにつながると言います(顧客満足度だけでなく、従業員満足度の向上も意識していることを感じます)。そのために会社のステークホルダー(利害関係者)が創心會の魅力を理解してもらえるように発信をしているということでした。私には、広報=営業というイメージがあったのですが、サービスを提供する職員さんのことを意識して情報発信しているのが印象的でした。

 そして、そのための広報誌のリニューアルでは、「介護に関係していない人にも会社を知ってもらえるように」ということを心掛けているそうです。

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 手に取った人が、知り合いに渡したくなるように。社会とのつながりを認知してもらえるようにしています。毎号の表紙は施設の利用者とは思えないような利用者さんの素敵な一面が伝えられています。

 そして、信頼を保つために、メディア取材は断らないようにもしていまあす。露出が増えると、良くない対応をしていることが明るみになってしまうというリスクもありますが、誠実、社会の問題に向き合っている姿勢を伝えるために、課題も踏まえて広報をしていく必要があると言います。コロナ禍では、試行錯誤する会社の姿を掲載してもらったそうです。

6.福祉の中での広報の在り方

 最後に、河﨑さんのお仕事への想いを話していただきました。創心會では、食事の世話をする、排せつの世話をする、という「業務」をしているのではない。業務を通じて、「生活の一翼を担っている。地域を支える。社会を良くする。」という心構えで仕事をしていることを大切にしているということです。

 そして、人によっては数十年という長きに渡る介護、福祉を受ける利用者さん、ご家族にとって、安心して任せてもらえるように、広報をしている。そのためには、外部に任せてはだめ。社内に転がっている、根付いている人、文化、風土、価値観を育てる。辛抱も必要。短期決戦ではない。誠実、虚偽のない経営活動が最もブランディングの近道、と言います。

 営業方法として「施設に受け入れ枠が空いてます」というのでは価値を伝えられない(むしろ、価値を下げることになることもある)。「困ったことありますか」「どんなサービスがあればよいと感じますか」と尋ねることで、話をしてもらえる。相手の心の扉を開くような声掛けをして、さらに事前期待度を超えるようにサービスをするのが王道で、「うちのサービス使いませんか」は最後の最後まで言わないように。

 そのためには、まずは、サービスを提供する職員の接遇や人間性。「重大な病気になったときに、命を預けたい」と思える信頼できる人間関係。利用者さんが「本当によく思いを聞いてくれている」と言ってもらえるような関係。名前を聞いてもらえるような人間関係を築いていける職員を大切にする組織であり続けたい、ということでした。

7.感想

 同じ介護業界で仕事をしてきた私としては、共感できることがたくさんあり、深く感銘を受けるお話ばかりでした。このnote報告もまとめのようでまとめにならないくらい(長くなってすみません…)、すべてが大切なお話で、これまで創心會さんが真剣に仕事に取り組んできたことが濃縮されているように感じました。

 アフタートークで、参加者の人と、「こんな想いの介護福祉の事業所がいろんな地域にあるといいね」と話しがありました。まだまだ介護福祉の業界では、サービスの言語化、広報への優先度が低いところも多いかと思います。そして、利用者の満足度を優先するあまり、職員がないがしろにされ、人材不足に拍車がかかるケースもあります。それぞれの地域、事業所でブランディングや広報に取り組むことで、魅力ある職場として発信ができるように感じました。

8.アーカイブが気になる方はこちらから

 最後に、アーカイブ動画を見てみたいという方は、投げ銭をいただけましたら、以下にYouTubeのリンクを張り付けておりますので、ご覧いただけます。よろしくお願いします。

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